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競馬ファンも意外と知らない東京競馬場にいる“二足歩行の白馬”って? 25年目職員とのコンビはまるで親子 

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中西祐介

中西祐介Yusuke Nakanishi

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photograph byYusuke Nakanishi

posted2021/03/19 17:00

競馬ファンも意外と知らない東京競馬場にいる“二足歩行の白馬”って? 25年目職員とのコンビはまるで親子<Number Web> photograph by Yusuke Nakanishi

ホワイトワンボーイと“呼吸”を合わせて演じる富塚剛氏。迫力あるレースとはまた違った馬の魅力を味わえる

ヤンチャだったホワイトワンボーイ

 富塚はアトラクションホースの第一人者だ。

 現在コンビを組むホワイトワンボーイが富塚のところにやってきたのは同馬が1歳の時のこと。馬の産地として知られる岩手県遠野の生まれで、アトラクションホースとしての力があると見てコンビを組むことを志願したそうだ。

 ホワイトワンボーイはその名の通り白く大きな体で優しい顔をしている。「遠野から来たばかりの若い頃はとてもヤンチャな性格で10歳を過ぎた頃からようやく落ち着いてきたと思いますよ」という言葉からは馬に対する優しさが溢れているように感じられた。

 筆者が初めて彼らを見たのは2016年まで毎年ゴールデンウィークに世田谷のJRA馬事公苑で行われていたJRAホースショーだった。このイベントでは馬術競技大会と並行してアトラクションホースの演技が行われ、グラスアリーナ前の観客席がいつもいっぱいになる、多くの人に愛されたイベントだった。そこで見た演技は圧巻であり、会場に詰めかけた子供から大人まで誰しもが歓声を上げ、笑顔が溢れる光景だったのを覚えている。

 2016年末をもって東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う改修工事に伴い、JRA馬事公苑が休苑となり、ホースショーでのお目見えは出来ないが競馬場でのイベントや小学校への訪問などを通じて演技を披露し続けている。

「親子のようなもの」

 富塚にとって長くコンビを組む相棒との関係はどんなものなのかと問うと「親子」と答える。

 富塚の掛け声に合わせるようにお辞儀をしたり、飛び跳ねたりと馬の大きな動作が見る者に驚きを与えてくれるのと同時に息がピッタリと合ったその掛け合いの中から長い時間をかけて作り出してきた呼吸を感じ、その中にある体温を感じることがある。

 それはまさに人馬がお互いに向ける愛情以外の何物でもないだろう。

【次ページ】 短時間で習得できるものではない

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