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「ひとつのファミリーだった」セナとホンダの6年間。~没後28年目の追憶~
posted2021/03/15 07:00
text by
今宮雅子Masako Imamiya
photograph by
Getty Images
ドライバーのエゴやエンジニアの意地がレースを豊かに彩っていた頃、セナとホンダがともに過ごした6年間にも様々な人間ドラマが交錯した。時には言葉も感情もぶつけ合った。いまはすべてが懐かしい色に包まれる。
「いちばん大切な思い出……?」
少し答えを探した後「やっぱり、亡くなった後かな」と木内健雄は言った。
「たとえば第3期F1のブラジルGP、彼のお墓参りをした時には、彼がいた存在の大きさをすごく感じました。ホンダを引退する時にはカミさんと一緒にヨーロッパを旅行したんですけど、途中でイモラに立ち寄ってセナの像を見て……あの頃と同じ恰好でそこに座っていたなぁ。
離れてからのほうが、折に触れそういう機会があって。一緒にいたのは僕がまだ30代前半の頃だったけど、自分のキャラクターの形成にものすごくインパクトを与えた人間だったなと、いま思います」
アイルトン・セナとホンダがともに過ごした6年間には、美しく感動的な物語がいくつも生まれた。しかし、あらゆる意味で自由な競争が繰り広げられた時代だ。F1はドライバーのエゴと技術者の負けん気が融合して速さを生む夢のような世界であると同時に、感情豊かで世俗的な“日常”の一面も隠さずに併せ持っていた。
木内がセナのエンジン担当となったのは'90年。アラン・プロストに替わってゲルハルト・ベルガーがセナのチームメイトとなり、マクラーレン・ホンダは内部の平穏を取り戻していた。しかしライバルチームが台頭するなか、勝利に対するセナの執念は、家族のようなチームだからこそ、時には家族でさえ許せない態度を生んだ。