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“中量級”の久保建英は「使う側」へ行くべき… 重視すべきモドリッチ&シルバと同じ資質とは【ヘタフェで苦戦中】
posted2021/03/04 17:01
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Mutsu Kawamori
「新しい久保建英」だそうだ。
横浜F・マリノスの高卒ルーキー、樺山諒乃介のことである。2021シーズンのJ1リーグ開幕戦でスタメン出場を果たした18歳のMFは、左サイドを主戦場に得意のドリブルで多彩な仕掛けを披露。前半のみの出場だったが、昨季王者・川崎フロンターレを相手に放ったインパクトは大きかった。
メディアはいつだって新しいスターを求める。しかし、「リオネル・メッシ2世」や「次世代のクリスティアーノ・ロナウド」ならまだ分かるが、ヨーロッパのトップリーグでの経験が2年にも満たない19歳の久保を捕まえて、新しいも古いもないだろう。
今季、ビジャレアルからヘタフェへ、シーズン中の再レンタルを決断した久保だが、その新天地では思うように出場機会を得られずにいる。ホセ・ボルダラス監督は、カウンター一辺倒の攻撃に新たな側面をもたらそうと、久保や同じく冬に獲得したカルレス・アレニャを加入当初は重用していたが、失点が増え、負けが込み始めると、結局は守備偏重型のスタイルへと逆戻り。久保の立ち位置は、あっという間にベンチ要員となった。
ボルダラス監督の元では技術より泥臭さ
ボルダラス監督のハイプレスサッカーでは、技術よりも走力が、華やかさよりも泥臭さが要求される。アンチフットボールとの批判はあるにせよ、それでスモールクラブのヘタフェをヨーロッパリーグ(EL)にまで導いたのだから、否定するつもりはない。しかも降格の危機が迫っているとあれば、スタイルの転換という大志も捨てざるを得なかったのだろう。
そうした認識は、スペイン国内だけのものではない。ボルダラスのチームが、対戦相手を潰しにかかる向こう見ずなタックルでたびたび話題に上ることは、遠く日本のリーガ・ウォッチャーでも知っている。
だからこそ、保有元のレアル・マドリーが、そして久保を取り巻く大人たちが、なぜこの将来有望な若者をヘタフェへと送り込んだのか、余計に理解できなかった。