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目が合えば誰でも襲う“狂える虎”タイガー・ジェット・シンが震災で流した涙 「子どもは本当に神様の子なんだ」

posted2021/03/11 11:02

 
目が合えば誰でも襲う“狂える虎”タイガー・ジェット・シンが震災で流した涙 「子どもは本当に神様の子なんだ」<Number Web> photograph by AFLO

アントニオ猪木(右)とタイガー・ジェット・シンの試合は周りが震えるほどの迫力だった

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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 “インドの狂える虎”タイガー・ジェット・シンが主宰するカナダの「タイガー・ジェット・シン財団」が、2月25日、在トロント総領事から表彰を受けた。これは東日本大震災で被災した子供たちへの支援活動をはじめとした、日本との友好親善への貢献が評価されたものだ。

「ヒールは人格者が多い」とは、プロレス界で昔からよく言われることだが、まさにそれを象徴するニュースだろう。

 タイガー・ジェット・シンといえば、日本では1973年に新日本プロレスに初来日して以降、長年にわたり悪の限りを尽くしてきた悪役レスラー。一方、地元トロントではさまざまな事業を展開する企業家であり、80年代から子供や医療機関に対する慈善活動を続けてきた慈善家としても知られている。地元にはシンの名前を冠した学校まであるのだ。

目が合った人間は誰でも襲う“狂人”ぶり

 しかし、シンのそういった“素顔”は、日本では長年伏せられてきた。シンのヒールとしてのプロ意識は徹底しており、長年、ファンに対して写真やサインはおろか、笑顔を見せることすら一切なく、目が合った人間は誰でも襲うという“狂人”ぶりを完璧に演じていた。そのため70~80年代当時は、「他のヒールは仕事としてやっているけど、シンだけは本物ではないか?」という声が上がることも少なくなかったのだ。

 かつての猪木の右腕であり、新日本プロレスの取締役営業本部長だった“過激な仕掛け人”こと新間寿は、シンをこう語る。

「猪木とシンの試合のときは、我々、会社の背広組もマスコミも震え上がるくらいだった。シンなんて、お客の前では記者だろうが誰だろうが、本気で襲ってくるからね。シンという男は、普段は紳士なんだけど、あのコスチュームを身につけた瞬間、身も心も“狂える虎”になれた男だったね」

【次ページ】 “素顔”のシンが語った貴重な言葉とは

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