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サッカー界もマッチングアプリの時代に? 名将ビエルサ率いるリーズが明かす移籍市場でのデジタル戦略とは
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Imaegs
posted2021/01/19 11:00
今季プレミア昇格を果たし、序盤はセンセーショナルな戦いを発揮したリーズ。名将ビエルサの掲げるサッカーに適応する選手が揃っている
「うちの場合、アカデミーの若い選手を売り出すのに使っている。リーズのアカデミーにはいい選手がいて、他のリーグでチャンスがありそうな選手がたくさんいるからね。
まだ成約した例はないが、昨年、若い選手をイスラエルのクラブにレンタルする話が実現しそうになった。最終的にその選手が希望しなかったから破談になったけども。クラブ同士ダイレクトにやり取りできるのがいい」
スペイン出身のオルタはもともとマルタ紙の記者だったが、選手のマネージメント業に転じ、セビージャでモンチに従事してクラブ強化のノウハウを学び、2017年にリーズのフットボールディレクター(いわゆるスポーツディレクター)に抜擢された。
名将マルセロ・ビエルサの招聘に成功し、適格な補強で戦力を整え、リーズを17年ぶりのプレミアリーグへ導いた。
実はオルタが使っている“マッチングアプリ”は『Player Lens』だけではない。そのライバル会社『TransferRoom』も併用している。
「どちらも似たツールだが、情報とコネクションは多ければ多いほどいいだろ? 買える情報はとことん集めるのが私の主義だ。リーズはいろいろな有料サービスを利用しており、それらに対して合わせて年間8万ユーロ(約960万円)くらい使っている。高い? 全然。二軍の選手1人分の給料より安い」
リーズが使用する有料サービス一覧
リーズはいったいどんな有料サービスを使っているのか? Zoomでのインタビュー中に訊くと、すぐにリストを送ってくれた。
試合映像:Wyscout & Hudl
映像&統計データ:InStat
データベース:ISF Scout(Stats Perform)
ビッグデータ:StatsBomb、SciSports、Analytics FC
移籍マッチング:Player Lens、TransferRoom
「Wyscoutは試合を見るのに良くて、InStatはライバルチームの分析に便利。
SciSportsは選手の将来性を独自のアルゴリズムで数値化しているので、若い選手を探すときに重宝している。たとえば『スウェーデン、19歳以下、FW』と打ち、選手発掘の最初のフィルターに使っている。そこでいい選手が見つかったら、スカウトが継続してチェックする。
Analytics FCは似たタイプの選手を比較するのに便利。クロス、ドリブルなど180以上の項目で比較できる」
これらの有料サービスはお金さえ払えばどのクラブでも契約でき、おそらくビッグクラブはあらかた利用しているだろう。オルタは組み合わせ方で差を生み出せると考えている。
「情報には誰でもアクセスできる。どのサービスが何に有効かを理解して、賢く組み合わせる必要がある。それがサッカー界の新たな鍵になっている。
リーズはビッグクラブに比べて、予算もスタッフ数も限られている。数千人の選手を浅く知るのではなく、数百人を掘り下げて知る。それがうちのストラテジーだ」