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箱根駅伝、早稲田大はなぜ6位に沈んだか ダブルエース“2度のピーク”の難しさ【それでも来季は「三冠達成」】
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2021/01/13 11:00
10区を走り6番目にゴールテープを切った山口賢助。強い早大の完全復活は近いのかもしれない
“早稲田から世界へ”を掲げるからには
12月に長距離種目のみの日本選手権が開催されたこと自体が異例だったが、“早稲田から世界へ”を掲げるからには、日本一を決める舞台に立つ権利を有しながらそれを回避して箱根一本に絞るという選択肢はなかった。短期間で2度のピークを作ることの難しさは、覚悟した上での挑戦だった。
5区はルーキーの勢いの良さが災いした
もう1つの要因は特殊区間の5区での苦戦だ。
今夏は例年通りに合宿を組めず、特に山の対応が遅れていた。11月の時点で「なかなか手が回らず、上りも下りもまだ準備ができていない」と相楽監督が話していたほどだ。
とはいえ、山上り候補には1年生の諸冨湧と前回経験者の吉田がおり、それぞれ5区を希望してトレーニングを積んできていた。諸冨も吉田も箱根に向けて上り調子で、11月22日学内で実施したハーフマラソンのタイムトライアルでは、諸冨が1時間2分53秒で1着。吉田も1時間3分11秒とまずまずのタイムで続いた。相楽監督はギリギリまで頭を悩ませたが、12月29日の区間エントリーでは諸冨を5区に登録。吉田は、10区起用の可能性も残して補欠に登録した。
「吉田は今年1年練習が完璧ではなく、脚に不安があったので」(相楽監督)
結局大晦日には、5区は諸冨でいくことを決断した。
4区で鈴木創士(2年)が盛り返し、諸冨は3位でタスキを受けた。すぐ後ろには東京国際大と東洋大が続き、区間記録保持者の宮下隼人(東洋大3年)にかわされると諸冨はそのハイペースに食らいついた。今年の5区は本格的な上りに入る前まで強風が吹いていたが、約3.5km地点の函嶺洞門を諸冨は個人4番目のタイムで通過した。結果論になるが、ルーキーならではの勢いの良さが後に災いした。
「体調的には問題なかったので、緊張があったのと、オーバーペース気味に入った影響だったと思います」(相楽監督)
その後、宮下だけでなく、東海大4年の西田壮志ら実力者にかわされ、思うように走れないことに焦りも生じたのではないだろうか。経験不足を露呈し、諸冨は区間19位。チームは11位まで順位を落としてしまった。