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広島カープにWキャプテンが再び 29歳大瀬良大地が明かした「26歳鈴木誠也の“変顔”に救われた日」
posted2021/01/07 11:04
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
昨年まで2年連続Bクラスに終わった広島は、今年からキャプテン制を復活させる。
年末、佐々岡真司監督は地元テレビ局中国放送RCCの番組「イマナマ!」にリモートでゲスト出演した際に、その理由を明かした。
「3連覇した時に、投手では黒田(博樹)、野手では新井(貴浩)。この2人が投手、野手をしっかり引っ張った中で、いいチームづくりができたと思う。来年は、投手は大瀬良(大地)、野手は(鈴木)誠也をキャプテンにして、選手会長の田中広輔としっかりと話し合いをしながら、優勝に向けてチーム一丸となって戦いたいなと思います」
一体感を重んじる指揮官らしい提案であり、2人にそれぞれ直接会って思いを伝え、キャプテン就任を託した行動もまた佐々岡監督らしい。広島のキャプテン制は石原慶幸氏が務めた2009年以来。投手野手1人ずつのキャプテン制は黒田氏と前田智徳氏が投打の主将を務めた2007年以来となる。
気持ちが揺れるたび、黒田氏に電話した
ともに20代の新キャプテンは、広島の新たな時代の幕開けを感じさせる。彼らが持つカリスマ性やスター性だけでなく、現在に至るまで順風満帆な道のりではなかったことが、何より若い選手が多いチームの新リーダーにふさわしいように感じる。
鈴木は主砲、4番として、打線を引っ張る立場ではあったし、自身の言動がチームに与える影響は大きくなっていた。大盛穂や宇草孔基といった若手野手だけでなく、森下暢仁や塹江敦哉といった若手投手も鈴木に歩み寄って助言を求める姿がみられた。とはいえ、チーム内ではやや一歩引いたように感じられたのは、本人の中でチームに対して発信する後ろ盾がなかったからではないだろうか。まだ26歳の鈴木にとって必要だったものは、まさに「肩書」だったように思う。
鈴木は、佐々岡監督がキャプテン制を発案するきっかけとなった新井氏と黒田氏の影響をもっとも強く受けた選手ともいえる。新井氏からは、4番の後継者となるべく打者や選手としての姿勢を学び、黒田氏とは、引退後のオフに食事をしたことから連絡を取るようになった。昨季も気持ちが揺らいだときには何度か黒田氏の携帯を鳴らしたという。
良くも悪くも周囲が見える。見えすぎたことで昨年までは感情をコントロールし切れないこともあったが、キャプテン就任が鈴木の野球人生にとって大きな分岐点になるかもしれない。昨年12月の契約更改会見時にはすでに、その自覚を口にしていた。
「若いときに新井さんや黒田さん、他の先輩たちがやりやすい環境をつくってくれた。今度はそれを僕がしてあげたい。その子たちが活躍してくれたら、また強いカープが戻ってくるんじゃないかと思うので」
大瀬良を奮い立たせた、鈴木の“ある写真”
投手のキャプテンに就任する大瀬良も、そんな鈴木に救われたことがある。