炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島カープにWキャプテンが再び 29歳大瀬良大地が明かした「26歳鈴木誠也の“変顔”に救われた日」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2021/01/07 11:04
新キャプテンに就任する鈴木誠也(左)と大瀬良大地(右)。鈴木は5年連続で打率3割超を達成し昨季チームトップの成績。大瀬良は怪我の影響で防御率4.41と苦戦するも3年連続の開幕投手を目指す
広島が25年ぶりの優勝を成し遂げた2016年の3月、2人はリハビリをメインとする三軍にいた。大瀬良は右肘の「内側側副靭帯(じんたい)の部分損傷」、鈴木は「右ハムストリングの筋挫傷」で春季キャンプを離脱。チームがキャンプを打ち上げ、レギュラー争いを本格化させる中、大野練習場でリハビリを続けていた。
大瀬良にとっては、中継ぎに配置転換された前年から先発に再転向する年だった。メディアの前では前向きなコメントをしながらも、内心は焦っていたし、落ち込んでいた。
「あのとき誠也が一緒にリハビリしていたのは本当に助かりました。存在は大きかった」
当時そう語っていたように、地道なリハビリで明るい言葉をかけたり、変顔の写真を送ってきたりと、切り替えが早い後輩が落ち込む先輩を奮い立たせた。
一方の鈴木もまた、年が近く、話しやすい先輩の大瀬良を頼りにしている。シーズン中の試合前練習時、話をする2人の姿を何度も見てきた。投打のキャプテンの絆がチームの結束力にも影響するだけに、この組み合わせは相性抜群といえるだろう。
大瀬良は「めちゃくちゃ不器用」と自認する短所も背負いながら、エースまで上り詰めた。昨季シュートを習得したように、球種は数が増えただけでなく、年々精度も上がっている。天才肌ではない“努力家”だからこそ、若い選手に伝えられることもある。
「いろんな経験はしてきたのでね。自分の経験から、こうだったよとか、こうしたらいいんじゃないというのはいえると思う」
決して「黒田と新井」の代わりではない
ともにリハビリに励んだ2016年から優勝、連覇、3連覇をへて、広島のエース、4番となった。そしてチームは今、転換期を迎えている。
広島が新しい時代を切り開くには、新しいリーダーが必要かもしれない。ただ、大瀬良と鈴木は、決して黒田氏と新井氏の代わりではない。
大瀬良は言う。
「誠也とは今年もちょこちょこ話をしてきましたが、より深いところで話をしていかないといけないなと思います」
大瀬良は大瀬良らしく、鈴木は鈴木らしいリーダー像をつくっていけばいい。選手会長の田中広とともにチームの先頭を走る2人の新キャプテンが、2021年広島の道標となってくれるだろう。