“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
年間47&151も違う…「パ高セ低」を示す2つの数字 セ・リーグに“攻撃的精神”が求められるワケ
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/17 11:02
効果的な内角攻めで巨人打線を封じ込めたソフトバンク。日本シリーズ第1戦のエース千賀の投球は、大きな分岐点となった
攻めの姿勢を象徴する「与死球」
前述した“攻撃的精神”を表すデータとして与死球を見てほしい。一見、ネガティブな数字に見えるが、私はこれをプラス面として捉えている。打者の内角を厳しく攻める副産物、という考え方だ。
その死球数でセはパに及ばない。今季は、セの218個に対してパは265個。以前、梶谷隆幸(当時DeNA、現巨人)を取材したとき、「パ・リーグの打者は内角攻めに慣れているのでは?」と聞くと、「球場が広い分、パ・リーグの投手は内角を厳しく突けるのではないか」と語っていたことがある。さらに「(セ・リーグの配球は)セオリーは外で、ときたま内に放ってくる」と答えてくれた。現在は千葉、福岡の球場にテラス席が設けられ、広さに差はなくなっているが、パの内角に投げる基本線は変わっていない。16年以降のセ、パ与死球の推移を次に紹介する。
<2016年〜2020年の与死球の推移>
セ・リーグ/286→293→288→291→218
パ・リーグ/305→273→336→342→265
日本シリーズでも際立った内角攻め
変則的なレギュレーションで行われた今季は例外として、17年以外はパの与死球が上回り、18年以降はその差は広がっていることがわかる。20年のセで最も多く死球を与えているのは59個の巨人、個人では菅野智之の7個が最も多い。パで最も多いのは56個のソフトバンクで、リーグ最多は石川柊太(ソフトバンク)の12個。強いチームと好投手が積極的に内角を攻めていることがわかり、それだけでも内角攻めの有効性が窺える。
今季の日本シリーズでもソフトバンクの捕手・甲斐拓也が積極的に打者の内角を攻め、巨人の坂本勇人や丸佳浩、岡本和真の主軸を封じ込んだのは記憶に新しい。