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ヒグマに襲われ死亡したハンターの「顔面」は原形をとどめない…なぜ顔を狙うのか?
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph byGetty Images
posted2020/12/13 11:00
日本では北海道だけに生息するヒグマ(写真はイメージです)
一瞬で人の顔を識別・記憶する能力がある
「できます」と門崎氏は断言する。
識者のなかには、「ヒグマは比較的視力が弱く、おもに嗅覚を使って状況を認識する」という向きもあるが、それは間違いだという。
「ヒグマには昼夜を問わず活動できる視力があり、闇夜に川岸から飛び込んで水中の魚を捕まえることもできる。また一瞬で人の顔を識別・記憶する能力もあります」
その一例として、門崎氏が挙げたのが、1974年(昭和49年)に北海道オホーツク管内斜里町で起きた人身事故である。冒頭に記した凄惨な現場は、この事件のものだ。
当時、現地調査を行った門崎氏によると、事件の経緯は以下のようなものだったという。
12日に家族が捜索願を出し、13日午前、遺体が発見された
現場となったのは、斜里町郊外を流れる幾品川沿いの丘陵地。一帯はジャガイモやてんさいなどの畑地で、例年ヒグマが出没する地帯だった。畑地に接する樹林は、起伏にとみ、林床には人を寄せ付けないほどのクマイザサが密生していた。
「この地域では、この年の9月ごろからヒグマが出没していたたため、猟師による駆除が求められていました」
そんな折、11月10日夜から早朝にかけて降雪があった。雪上の足跡を辿れば、追跡は容易になるため、猟師のAさんは11日の朝、「山に入る」と単身バスに乗り、ヒグマ撃ちに出かけたが、その後、行方不明となる。12日に家族が捜索願を出し、13日午前、遺体が発見された。
門崎氏によると、Aさんは幾品川右岸の畑を下流に向かって探索する過程で、ビート集積場付近で足跡とともにヒグマを発見したと思われる。Aさんに気づいたヒグマは川を渡って対岸へ逃走。Aさんは足跡を追い、ヒグマはササが茂った斜面を逃げ、周囲を見渡せる場所に出た。
「そこでAさんがヒグマに近づき、一発撃ったようでした」