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栗原陵矢「“選球体”で打て!」~MVPの素顔~
posted2020/12/09 07:00

日本シリーズMVPに輝いた栗原陵矢は、ホークスの先輩たちの言葉を聞きながら強さを増していった
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Naoya Sanuki
推定年俸1000万円、昨季まで通算10安打の男が、巨人のエース菅野智之の球を豪快にスタンドへ運び、驚異の打率5割で、日本シリーズMVPに輝いた。先輩たちに愛される24歳の若鷹、飛躍の物語――。
未だかつて、これほど底抜けに明るいMVPインタビューがあっただろうか。令和の世に誕生した「シリーズ男」は24歳の若鷹、栗原陵矢だった。持ちネタである「元気100倍、アンパンマン!」のモノマネを、少し照れながらも全力で披露。日本中の野球ファンが注目したお立ち台を締めくくった。
「しゃべっている最中にベンチの方をちらっと見たら、先輩たちがみんな『やれ、やれ』とこっちに向かってジェスチャーをしてくるんで、これはもうやるしかないなと。特に(川島)慶三さんが一番目立っていましたね(笑)」
この大舞台でこんな思いきったことがやれる。それがホークスのチームカラーであり、強さの象徴でもある。
工藤公康監督が戦前に「先手必勝」を掲げて臨んだ今年の日本シリーズ。それを誰よりも体現したのが栗原だった。
日本シリーズ初スタメンで迎えた第1戦の2回表無死一塁で最初の打席に立つ。マウンドに目をやると、今季セ・リーグ投手2冠の大エース、菅野智之が仁王立ちしていた。ふと記憶が蘇った。プロ3年目、20歳だった2017年6月13日、記念すべきプロ初打席の相手が菅野だった。「緊張で頭が真っ白だった」。なんとかバットに当てただけのセカンドゴロに終わっていた。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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