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マイルCSの主役、グランアレグリアは“DNAの呪い”を抜け出した? アーモンドアイを負かした名馬が再び
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2020/11/21 17:01
前走のスプリンターズステークスを圧勝したクリストフ・ルメール騎乗のグランアレグリア
捕食動物から逃げる本能から脱した?
サラブレッドは、なぜか同じ相手に負けつづける。その馬をかわせる余力があっても、自分でブレーキをかけて減速しているかに見えるケースさえある。捕食動物から逃げて生き延びるDNAを持っているため、群れのリーダーや自分より上位の個体より前を走ったら危ない、と本能的に感じているからか。
だとしたら、その序列を逆転できる馬は、本能による呪縛から脱することのできる、強い意志の力を持った馬と考えていいのではないか。野生動物とは異なる、人間によってつくられたサラブレッドならではのことかもしれない。
このところのグランアレグリアの走りからは、そういう特別な強さが感じられる。
前走のスプリンターズステークスでは、直線の短い中山でとても届かないように見えた後方から豪快に前の馬を抜き去り、最後は流すようにしてGI3勝目を挙げた。
エンジンのかかりが遅く、明らかにスプリント向きではないと思わせる競馬で圧勝してしまった。今のグランアレグリアは、ベストのマイルだとどれだけ強いのかと考えると恐ろしいほどだ。
勝てば、自身GI4勝目になると同時に、主戦のクリストフ・ルメールにとって、今年のGI7勝目となる。
唯一グランアレグリアを負かすことができる馬が
他の出走馬で、グランアレグリアを負かすことができる馬がいるとしたら、サリオス(牡3歳、父ハーツクライ、美浦・堀宣行厩舎)くらいではないか。
2歳時は、東京芝1600mの新馬戦を楽勝したあと、約4カ月ぶりとなった同コースのサウジアラビアロイヤルカップをレコード勝ち。そして、今回のレースと同じ舞台で行われた朝日杯を圧勝した。
今春のクラシック二冠はともにコントレイルの2着と涙を呑んだが、秋初戦となった東京芝1800mの毎日王冠で古馬相手に3馬身差の完勝。間接的にコントレイルの強さを証明したと同時に、自身のマイルから中距離への適性の高さをあらためて見せつけた。
コントレイルという化け物がいなければ、普通にクラシック二冠馬になっていた馬だ。コントレイル以外には負けないとばかりに、圧巻のパフォーマンスを披露する可能性も大いにある。