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6年ぶりに復活“二代目”「もつ鍋わたり」ベイスターズへの毒舌も健在「モバ浜の話なんかするんじゃねぇよ」 

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村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byHidenobu Murase

posted2020/11/20 17:02

6年ぶりに復活“二代目”「もつ鍋わたり」ベイスターズへの毒舌も健在「モバ浜の話なんかするんじゃねぇよ」<Number Web> photograph by Hidenobu Murase

二代目「もつ鍋わたり」のオープンに駆けつけた元ベイスターズの中野渡進氏(右)。左は新店主のリーチならぬ、リッキーさん。

後継者は長身のあの外国人左腕?

――わ、わたりさん……なんか6年経って随分丸くなってませんか?

「工場でひとりFMヨコハマBGMに作業だけしてたら毒も溜まりようがねぇだろ。まぁ、キーちゃんがいるからベイスターズを見ているだけで、あとは何を聞かれても知らねぇよ。俺は加工屋だからな」

――あれ。工場というのは今後も続けられるのですか? 二代目もつ鍋わたりがオープンするのでわたりさんはどうするのかと。

「俺はこの先もずっと工場を1人で回して生きていくよ。まぁ、コロナで打撃は受けたけど致命傷にはなってねぇ。踏ん張りどころだけどな。ただ、この先どうなろうと、今さら俺が接客業に戻るなんてことは一生ねぇよ。新しいもつ鍋わたりは、俺も弟のタケシも厨房には立たねえ。俺たち兄弟のもつ鍋を継承してくれた二代目に託すことを決めたんだ」

――6年前、急に閉店した時には、あのタレのレシピを巡って血で血を洗う壮絶な争奪戦が行われたと噂に聞いていますが、いよいよ後継者が見つかったのですね。誰ですかそれは?

「リッキーだよ」

――尾花さんの時に地震で帰っちゃった外国人左腕ですか? まさかの長身つながりで。 

「(ブレント・)リーチじゃねぇ、リッキーだよ。国分寺の飲食仲間というか先輩だな。豪快で、気合入ってる人で、中央線界隈で和食やイタリアン、お好み焼き屋とか10店舗ぐらい店出してたんだよ。俺たちのもつ鍋が大好きで、ずっと研究していてくれてさ。『この味どうやったら出るんだよ。教えてくれよ……』って冗談で何度も言ってたんだけど、実際には“絶対に自力であの味を出してやる”って、ずーっと研究していたみたいでよ」

――それがついに完成して、今回店を出すと。

「いや、できなかったんだ。だからな。いつだったか、リッキーの家に遊びに行ったときによ。タレと一緒にレシピを紙に書いて渡したんだ。もう俺は一生店をやるつもりもねえし、それなら、想いのあるリッキーにと思ってな」

――それで、店を出すことに!

リキ「そんなんじゃ逆に出せねぇぇぇぇぇですよ!」

――こちら、リッキーさんですか?

「元気あるだろ」

リキ「はじめまして。この度、『二代目もつ鍋わたり』を出させていただきます林力と申します。小倉生まれの下関育ち」

――大洋ホエールズですね。

「……リッキー、つまんねぇ話になるぞ。オープンの準備で忙しいんだからあっちいっとけって」

リキ「どうぞごゆっくり」

「話の続きだ。俺としては、もうリッキーにもつ鍋わたりは全部あげた。なのに、レシピを書いたメモ帳を渡したら『こんなもん貰っちまったら逆にできねぇ』って言いやがる。俺たち兄弟の鍋を本当に大事に思ってくれてたからな。『レシピもらったからって、そう簡単にできねぇ。お守り代わりに死ぬまで懐に入れて持っておくわ』って。そういう想いがさ……うれしかったよな」

二代目オープンの経緯

――それじゃあ出店の予定はなかったんですね。それがなぜ?

「おまえ、今年どんだけ外にメシ食べ行ったよ」

――……行かなくなりましたね。

「飲食はどこも本当に厳しい。このコロナのおかげで冗談じゃなく死にかけてる。国分寺時代の飲食の後輩も、何度もうちに相談へ来たけどよ、試行錯誤して必死にやっても肝心の人がいねえんだからな。シャレにならねえ惨状だよ。リッキーもよ、ここまでついてきてくれた従業員を『死んでも食わせなきゃなんねえ』ってクビも切らずに大借金を重ねてよ。必死に店回してやってきたんだけど、あの元気の塊が、何もかも終わっちまったみてぇに元気をなくしちまってさ」

――それでもつ鍋わたりを……ですか。

「もう意地張ってねえで、もつ鍋出せよって。いま、瑞穂町で蕎麦ダイニング(http://www.xn--74qv8d2zo.com/)をやってるタケシも『絶対にやるべきだ』って快諾してくれてんだ。それで、やっとだ。リッキーも他人の味で店を出すのは葛藤があったと思うよ。それでも人生を賭けた勝負だと決断した。国分寺で10年以上続いた和食の店を改装して、この店を出した」

――なるほど……そういう経緯があったんですね。

リキ「ただ、僕も飲食の世界でメシを食ってきたプロとしての自負があります。やるからには最高の形で出したかったので、レシピを元にさらに味の向上を目指しました。……どうぞ食べてみてください」

【次ページ】 「ただの酔っ払っている客だよ」

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