「ただの酔っ払っている客だよ」

――それではいただきます。ああああっ、やっぱり美味しい！ でも、一体どこが変わったのですか？

リキ「そうなんですよ。何度試作を重ねても元のレシピ以上の味が出せなかった。わたりのタレはすでに完成形だったんです」

「二代目もつ鍋わたり」自慢のもつ鍋

――でも、なんでしょう。久しぶりだからなのか、むちゃくちゃ美味い。

「そりゃ、もつのせいだわ。鮮度の高い黒毛和牛のもつを使っているからな。俺の時とはレベルが違うよ。ただ、もうリッキーのもんだからよ、タレだっていじってくれてもよかったんだ。ひとつの味にこだわるのがいいわけじゃない。他所の手に掛かってさらに良くなる場合もあるんだ。それでも、リッキーは俺たち兄弟が一番『美味しい』と思った味が、一番だと感じてくれた。それはやっぱりうれしいんだよな」

――野球界の生え抜き至上主義にも通ずる考え方ですね。この店でわたりさんはどういう立ち位置になるんですか？

「ただの酔っぱらってる客だよ。利害関係も何もねえけど、それでも、絶対に成功してほしいよな。俺は自分の店の宣伝は『横浜ファンは来るな』しか言ったことねぇけど、リッキーの店なら喜んで呼びたい。厨房には立たねえけどよ、客として仕事帰りにここで酒飲んでりゃ、店やってた時より少しは楽しんでもらえるだろ」

――誰も話しかける勇気がないと思います。また遠くから眺めるオカピ状態ですよ。

「そういや、さっそく小田のブーへー（幸平）から連絡が来たな。あいつ、どこの国に需要あるのか知らねえけど今YouTuberやってんだろ。新しい店で対談しようって。いや、あいつ10代の頃から知ってるけど、ビミョーに勘違いしてんだよな。それが面白くて愛されるんだけど」

――わたりさんが、YouTubeに出るって、時代は変わりましたね。

「もつ鍋わたりは俺たち兄弟が作ってきた味だ。一時はこのまま消えていくものだと思っていたけどよ……思い入れがないわけがねぇ。野球をクビになって途方に暮れていた俺と、いろんな人を結んでくれた味だからな。俺がいろんな人に応援してもらった分だけ、今度は恩返しする番だ。とりあえず、クラウドファンディング（https://camp-fire.jp/projects/view/336472）で10万円分買っといたから、これからほぼ毎日この店で浴びるほど飲んでるだろうよ」

――この「二代目もつ鍋わたり」のクラウドファンディングのページ、谷繁さん、野村弘樹さん、木塚さん、加藤武治さんにオリックスの小林宏二軍監督（代行）にYouTuberの小田幸平さんから応援メッセージがあります。すごいですね。

「みんな、またもつ鍋わたりが復活すると言ったら、協力するって言ってくれてな。谷繁さんなんか現役時代みたいにまた『おいわたり、とりあえず15人前送れ』って。あの人、ゴルフだけじゃなく引退してからサーフィンもはじめたから、相変わらずめっちゃ食うんだって」

番長には特別に「しじみの味噌汁」

――いろんな人の想いを乗せて、この冬は「二代目もつ鍋わたり」もベイスターズも新しい船出となりますね。

「まぁ、職種は違えど、どっちも厳しい戦いになるだろうよ。ただ、人生を賭けた勝負だ。やらなきゃならねぇってことだろうな。俺が言えるのは、本気の想いがなければ人の心なんて動かないんだよ。『もう一度、立ち上がろう』と全員が同じ方向を向いて、強い気持ちで結束できるかどうかじゃねえか。来年、コロナが終わってよ、番長がもし店に来るようなことがあれば、特別にしじみの味噌汁でも作ってやるよ。あの人、肝機能障害持ちだからやさしいもの作ってやんねえとな」