初代表の佐野「刺激になった」

　今年初めてボルダリングで日本代表入りした佐野大輝（飛鳥未来高）は、完登ゼロに終わった初日の競技後に、「日本代表という雰囲気に飲まれた部分もあったのかもしれません」と心境を吐露した。

　首都圏で生活していればクライミングジムで代表選手と顔を合わせることもあり、普段から交流も生まれる。だが、愛知県に暮らす高校2年生にとって、名だたる日本代表選手は雲の上の存在。萎縮したとしても不思議はない。

　そんな佐野を気にかけたのが、大学時代を愛知県で過ごした藤井快（TEAM au）だった。佐野は競技に臨む藤井の姿勢を間近に見られたことを「とても刺激になった」と収穫にあげる。

「初めての日本代表で不安もありましたが、藤井さんがいろいろ喋りかけてくれたので、少しはリラックスできました。藤井さんが集中する姿はとても勉強になりましたし、今回はボクの実力はまだ足りないと痛感させられましたが、来年も必ず日本代表に入って、藤井さんのレベルに近づきたいという思いを強くしました」

「来年こそはW杯に出たい」

　日本代表チームを体感してモチベーションを高めたのは佐野に限ったことではない。今年初めて日本代表になった選手たちは口々に、「来年また日本代表になって来年こそはW杯に出たい」と誓っていた。

　ただし、彼らがそれを実現させるのは容易ではない。今年の日本代表から外れた選手たちは返り咲きを期して腕を磨き、いまだ代表経験のない選手たちも虎視眈々とその座を狙っている。代表経験の豊富な選手でさえ気を抜いたら簡単に飲み込まれてしまうほど、国内のレベルは高くて層は厚い。

　来年度の日本代表が決まるのは、年明けに行われるボルダリング、リード、スピードそれぞれの『ジャパンカップ』。日本代表ユニフォームをかけた戦いはすでに始まっている。