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4球団競合でカープ入り・小園海斗 “ルーキーらしからぬ”活躍の裏で「ずっとヤバかった」 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2020/11/10 06:00

4球団競合でカープ入り・小園海斗 “ルーキーらしからぬ”活躍の裏で「ずっとヤバかった」<Number Web> photograph by KYODO

今年の5月、打撃練習に励む小園海斗

 開幕を二軍で迎え、8月まで打率1割台を推移した。遊撃のポジションを後輩の韮沢雄也に譲る試合もあり、遠征に同行できないこと時期もあった。プロ野球はホップ、ステップ、ジャンプと順調にいくほど甘い世界ではない。プロの高い壁を乗り越えるためには、一度沈む経験をバネにしなければいけないのかもしれない。

 勢いで駆け抜けた1年目とは違い、2年目は自分と向き合うシーズンとなった。当時を振り返り「1年目と2年目が逆っぽいですね」と苦笑いする。挫折というよりも、訪れるべくして訪れた試練のように感じていた。

 遠征に同行せず、打撃コーチと広島に残留して打撃フォームを徹底的に見直した。軸足の左足にしっかりと溜めをつくれず、バットに力が伝わらないなど欠点が見えた。チューブで左足を捕手側に引っ張ってもらいながら軸足にしっかりと重心を残す意識を体にたたき込んだ。

 8月まで1割9分だった打率は9月から急上昇。9月以降、4割2分3厘の高打率を維持して、シーズン打率も3割に乗せた。

「最後に二軍で結果を出せたのは大きかった。最後の方には固まってくるものもあったので、昨年よりは変わった自分になれたんじゃないかなと思います。一軍でなかなかプレーできず悔しい1年でしたが、すごく成長できる部分が昨年よりもあったので、次につながる年になると思う」

3年目は“勝負の年”

 武道や茶道の世界で「守破離」という言葉がある。修業における段階を示したもので、「守」は師や流派の教えや型を忠実に守って身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れて心技を発展させる段階。「離」は、ひとつの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階をいう。

 小園の1年目が、1軍の緊張感の中で言われたことを忠実にこなそうとした「守」とするならば、自分の打撃と向き合った2年目は「破」だったのかもしれない。来年3年目は「離」として、独自の新しいスタイルを確立させることができるだろうか。

 小園は今、宮崎の地で若手選手が集うフェニックスリーグを戦っている。「(例年なら)11月はキャンプだったのが実戦で経験できるので、身になることが多いと思う。新しい自分になれるように……」。すでに視線は「勝負の年」と位置づける3年目を向いている。

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