炎の一筆入魂BACK NUMBER
4球団競合でカープ入り・小園海斗 “ルーキーらしからぬ”活躍の裏で「ずっとヤバかった」
posted2020/11/10 06:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
<一軍出場3試合、6打席、6打数無安打、打率0割0分0厘、0本塁打、0打点、0盗塁……>。広島の小園海斗の2年目の成績はさみしい数字が並ぶ。
18年ドラフト会議で4球団競合の末に広島に入団した1年目の昨季は、球団19年ぶりとなる高卒新人開幕一軍入り。ショートのレギュラーである田中広輔の(後に発表された)ケガによる成績下降もあり、7月からはショートの1番手として起用された。
一軍出場58試合、197打席、188打数40安打、打率2割1分3厘、4本塁打、16打点、1盗塁。最後までクライマックス・シリーズ進出争いを繰り広げたチームの戦力であった。
だが、大きな飛躍を期待した2年目に大きく失速。それでも小園本人に聞くと、意外なほど冷静に2年目の現実を受け止めていた。
「自分の力が全然ないのは分かっていた。昨年も二軍で結果を残せたわけではなかったですから」
「自分のことは考えられなかった」
一軍でも堂々としたプレーや思い切りの良さは高卒1年目の新人とは思えなかった。ただ、2軍での成績は2割1分、6本塁打、22打点と一軍で残した成績とそれほど変わらない。再昇格直前の試合で猛打賞を獲得したことで2割に上がった打率は、その前まで打率1割台だった。一軍でプレーする上で後ろ盾になる成績を二軍で積み重ねていたわけではない。
「ずっとヤバかった。自分のことは考えられなかった。チームの勝ち負けもありますし、投手の成績にもつながる。実際に1勝でクライマックスシリーズにいけなかったように、1試合の重みがあるんです。プレーしている中でも、まだまだと感じていました。行けるときは良くても、ダメなときはとことんダメ。自分のことなんて考えられず、目の前のことに必死にやっていました」
昨日までマウンドで投げていた投手が今日には一軍にいない厳しい現実。ワンプレーで球場の雰囲気が変わる喜びと怖さ。高校を卒業したばかりの19歳小園を支えていたのは、気力だけだった。
打率は1割台……2年目の試練
迎えた2年目。春季キャンプでは当然、手術から復帰した田中広とのポジション争いが注目された。だが、まだ小園には確かな手ごたえも、自信もなかった。コロナによる開幕延期で調整期間が延びても、その答えは見つからないまま時間だけが過ぎた。