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“奇跡のCS進出”ならず…それでもライオンズを陰で支えた西武鉄道の「野球ダイヤ」、特別な半年 

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鼠入昌史

鼠入昌史Masashi Soiri

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photograph byMasashi Soiri

posted2020/11/09 11:03

“奇跡のCS進出”ならず…それでもライオンズを陰で支えた西武鉄道の「野球ダイヤ」、特別な半年<Number Web> photograph by Masashi Soiri

「野球ダイヤ」を差配する西武球場前駅の松浦駅長

「100%の乗車率になった場合は、ロープを張ります」

 そして、この増員された“駅員”たちがもうひとつのコロナ対策のカギを握る。櫛形の西武球場前駅では、どうしても(進行方向)最後尾の車両が混雑しやすい。特に、発車間際に駆け込み乗車が相次げば、最後尾車両だけが“密”になり、改札口から遠い前方の車両は余裕たっぷり、などということにもなりかねないのだ。そこで、駅員たちが放送などで前方での乗車を促している。

「ボードを掲げて前方に乗っていただくようお声がけしたり、余裕を持って次の列車に乗車していただくよう案内したりしています。定期列車を含めれば7~8分後には次の列車が出発しますからね。また、最後尾車両がおおむね100%の乗車率になった場合には、ドアの前にロープを張って乗車をご遠慮いただくこともあります」(松浦駅長)

「臨時列車の3本目ともなるともうガラガラです」

 乗車率100%というと、座席がすべて埋まり、立っている客全員がつり革か手すりに掴まれる程度の混雑具合。つまりまだまだ“満員電車”には程遠いのだが、それだけ余裕を持ってコントロールしているのだ。もちろんロープを用いた対応はコロナ禍の今年ならでは。

「4000人ほどが電車利用で、途中で帰る人が多いと試合終了後には2000人程度しか来られないこともある。そうなると臨時列車の3本目ともなるともうガラガラですよね。でも、基本的な対応は例年通り。安心して、お客さまにはご利用いただきたいですからね」(松浦駅長)

 ちなみに、ナイター帰りのお客はお酒を飲んでいる人も多く、さらに試合結果によっては気分も上げ下げがあるイメージ。その点でも感染対策上、そして鉄道の安全運行上の問題となりそうなトラブルも気になるが……。

「おかげさまで、そうしたことはまったくといっていいほどありません。私たちができるのは、安心してご利用いただけるよう、電車内の“密”を作らないため混雑状況を把握して、的確な放送とプラカードによるご案内をすることだけ。最終的にはお客さまにご協力いただかなければ何もできないんです。ですから、お客さまのご協力のおかげで、密も回避して安全に運行もできているということですね」(松浦駅長)

 ときに無線で指示を飛ばしながら、観客たちの流れを見守る松浦駅長。その話を聞いて取材をひと通り終え、筆者は“3本目の臨時列車”に乗って帰路についた。ほとんどの観客はすでに先発した列車で帰っており、車内は閑散としていた。本当ならば、3本目の臨時列車も活気あふれる満員電車、が理想のはず。そんな日がまたやって来ることを祈るばかり、である――。

(写真=鼠入昌史)

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