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“奇跡のCS進出”ならず…それでもライオンズを陰で支えた西武鉄道の「野球ダイヤ」、特別な半年

posted2020/11/09 11:03

 
“奇跡のCS進出”ならず…それでもライオンズを陰で支えた西武鉄道の「野球ダイヤ」、特別な半年<Number Web> photograph by Masashi Soiri

「野球ダイヤ」を差配する西武球場前駅の松浦駅長

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鼠入昌史

鼠入昌史Masashi Soiri

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Masashi Soiri

 夜の9時を回ると、試合はいよいよ佳境に入る。その日、あいにく埼玉西武ライオンズは大差でリードを許して最終回。西武鉄道所沢駅管区の松浦靖志駅長は、真剣な眼差しでラスト1イニングの攻防を見つめる。スタジアムの一角……ではなく、場所は西武球場前駅の事務室だ。手元にはいくつもの列車の運行パターンが書かれたカードを広げ、時折無線や電話でどこかと連絡を取っている。

「いま、最終回に入ったのでこのままスムーズなら“6”でいきましょう」

 そんなやり取りをしている松浦駅長の後ろで、駅員たちも試合展開を見守る。ライオンズ最後の攻撃、少し楽天の投手陣がもたついて試合終了まで時間がかかる。すると再び松浦駅長が無線を手にする。

「うーん、ちょっと長くなってるんで“6”はナシ。たぶん“7”でいけると思います」

 そして試合が終わる。松浦駅長が電話で西武鉄道の司令に連絡。

「いま試合が終わりました。“7”、でいきます。お願いします」

 同じ内容を無線でも連絡し、事務室に控える駅員たちにも声をかけると、一斉に駅員たちが動き出す。試合中、ホームに停まっていた電車にも明かりが灯る。メットライフドームからは試合観戦を終えた観客たちが足早にやってきて、駅の改札を次々に通り抜ける。そしてホームの行き先案内には「急行 池袋ゆき」の列車の表示――。西武鉄道が誇る、“野球ダイヤ”の運用スタートである。

”野球ダイヤ”は西武鉄道の伝統

 西武鉄道狭山線の終点、西武球場前駅はその名の通り野球場の駅だ。改札口を出て左に折れて少し歩けばメットライフドームが鎮座する。試合日には多くの観客がやってきて、試合が終わればこの駅から電車に乗って帰ってゆく。西武鉄道ではそうした観客を効率的に輸送するため、いわゆる“野球ダイヤ”、通常とは違う体制で対応しているのだ。

 試合終了に合わせて臨時列車を走らせ、さらに駅員も増員して一気に押し寄せる乗客の案内も行う。所沢にライオンズが来て以来、西武鉄道ならではのいわば伝統のようなものだ。

【次ページ】 ”野球ダイヤ”、2つのコロナ対策

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