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坂本勇人「31歳で2000本安打」への道を拓いた“2009年の屈辱” 後輩にも教わり極めた右軸打法
posted2020/11/08 18:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
口調が尖っていた。
「別に特に気になんかしていないですよ。僕は僕なりに楽しくやっている。それじゃあ悪いんですか」
2011年。
あれはもう9年前のことになる。
試合後の囲み取材。巨人が東京ドームの試合で負けると取材までには時間がかかる。選手は素振りなどをしてからシャワーを浴び、着替えてロッカーから出てくる。その間に少し気持ちを落ち着かせて、駐車場へと向かう通路で記者に囲まれる。
いつの何戦だったか正確な日づけは定かでないが、確か夏場の負け試合だった。その試合の“戦犯”として、坂本勇人は番記者に取り囲まれていた。
「あの子は順調に育っていけば、とてつもない選手になる」
一通りゲームを振り返る話。穏やかな口調で質問に答える坂本。そこにある質問を投げかけた。
「ここのところずっと本来の打撃ではないけど、その点に関して気にすることはある?」
細かな言い回しは忘れたが、こんな趣旨の質問だったと思う。そして戻ってきた答えが冒頭の言葉だった。その言葉、特に「それが悪いですかね」とちょっと突き放すような不機嫌そうな表情は鮮明に覚えている。
言われたくないことを言われた。
それもそのはずである。
この頃の坂本勇人はどん底にいたからだ。
「あの子は順調に育っていけば、とてつもない選手になる」
原辰徳監督からこう耳打ちされたのは、坂本がプロ1年目を終えた2007年のシーズンオフだった。