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“奇跡のCS進出”ならず…それでもライオンズを陰で支えた西武鉄道の「野球ダイヤ」、特別な半年
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byMasashi Soiri
posted2020/11/09 11:03
「野球ダイヤ」を差配する西武球場前駅の松浦駅長
1本目の臨時列車は試合終了から10分後出発
「臨時列車は試合終了後から運行します。終了時間にあわせて、平日のナイターでは11のパターンを用意しており、試合が終わった時点で駅長が決めるんです。それで司令に連絡し、待機している乗務員や駅員も動きます」(松浦駅長)
どのパターンを採用するかは駅長の裁量に任されているが、基本的には1本目の臨時列車は試合終了からおおよそ10分後の出発。そのため、冒頭のように駅員たちも試合展開を見守ることになる。また、試合展開によっては途中で帰る客が多くなることもあるし、ライオンズが勝利した場合にはヒーローインタビューなどで観客の帰宅時間が遅くなることもある。試合終了からどのような流れで観客が帰路につき、どの列車に集中するのか。そうした要素をすべて勘案して駅長は臨時列車を走らせるパターンを決めているのだ。
「何もない日は駅員2名ですが、試合日は12名増員します」
臨時列車に使用する車両は、事前に回送や臨時列車で西武球場前駅にやってきてホームに停車し、試合終了を待っている。西武球場前駅には1~6番までのホームがあり、このうち15分間隔の定期列車は1番ホームを使う。臨時列車は2~4番ホームで待機し(休日のデーゲームなど臨時列車を4本運行する場合は5番ホームまで使用)、1番端の6番ホームには試合開催日のみ運行される特急「スタジアムエクスプレス」が停まっている。こうしていつでも運行できる状態を整えて試合終了を待つ、というわけだ。
「臨時列車の運行にあわせて、駅員も増員して待機しています。何もない日の西武球場前駅は駅員2名体制なのですが、試合日には観客数にもよりますが12名増員します。所沢駅管区だけではまかなえないので、他の管区の駅からも来てもらって、駅設備の消毒作業や清掃を実施し、帰りの輸送に備え配置や役割を伝えたのちは、試合展開を見守ってもらう、という感じですね」(松浦駅長)
取材当日は池袋や西武新宿などから応援に来ていた駅員もいた。ただ、観客数の少ない今年は、当日の入場人員などを見た上で数人を早めに帰宅させるなど、“効率的な運営”にも努めているという。