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「雪山で遭難、死にかけたハンガリー軍が…」あのラグビー日本代表をONE TEAMにした“ある実話”
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/10/24 17:00
キャプテンのリーチマイケルを先頭に31人の桜の勇士が 入場する姿はONE TEAMを象徴していた
「ゴミ落としたの誰?」ではなく……
楕円球を持たない日常生活にも活かせる言葉がある。
■「Picking up the tea towels」
直訳すると「布巾を拾い上げる」の意味だ。テーブルの上が汚れていたら、たとえ自分が汚していなくても綺麗に片付ける。床にゴミが落ちていたら、素通りせずに拾い上げてゴミ箱に捨てる。
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「ちょっと、汚れてるよ!」
「ゴミ落としたの誰?!」
ただただ文句を言うのではなく、誰も見ていなくても黙って後始末できることは、簡単そうでなかなかできるものじゃない。
ラグビー日本代表の試合後のロッカールームは、「使用前より綺麗」と言われるほど評判だったという。移動のバスや合宿地、試合会場など、ピッチの外でも整然とした振る舞いで爽やかな印象を残した理由が、この言葉にも表れている。
一方、「布巾を拾い上げなくてもいい」、いやむしろ、「拾い上げてはいけない」場面もある。
「でしゃばり過ぎない」
■「Do your job」
「自分の仕事をしろ」、「ちゃんと仕事しろよ」の意味だが、ジェイミー流には「でしゃばり過ぎない」というニュアンスがある。
「Picking up……とは矛盾するようですが、ピッチの上では1人1人が与えられた役割を理解して遂行することこそ一番大事です」
いざ、ラグビーの試合になれば、1人1人には細かい役割が与えられている。誰かが決まり事を忘れたりミスをした時、それを助けようとして余計なことをすると、今度は自分の持ち場に綻びが出て、連鎖的にチームのバランスは失われてしまう。「良かれと思って」手を差し伸べることに、実は組織として大きな崩壊につながる危険性があるということだ。
チーム作りの段階では、気を配り、お互いに助け合う。いざ試合になったら自分の任務を遂行することに徹する、というのが“ONE TEAM”の仕事術なのだ。