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ポストシーズンと乱戦の背景。連戦続きの苛酷な日程を乗り切るのはどのチームか? 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2020/10/10 06:00

ポストシーズンと乱戦の背景。連戦続きの苛酷な日程を乗り切るのはどのチームか?<Number Web> photograph by Getty Images

5試合連続で本塁打を放ったヤンキースのジャンカルロ・スタントン。ポストシーズンの打撃戦を象徴する選手だ

  10月7日現在、5試合で19打数7安打6本塁打。バットに当たればホームランという感じで、OPSは1.751という驚異の数字だ。ヤンキースが運よく勝ち進めば、ポストシーズン最多本塁打記録(単年)の更新も考えられる。フォーマットがちがうので単純な比較はできないが、従来の最多本塁打数は、バリー・ボンズ、ネルソン・クルーズ、カルロス・ベルトランが記録した8本だ。

 

 このスタントンを筆頭に、同じヤンキースのグレイバー・トーレス、アストロズのジョージ・スプリンガーやホゼ・アルトゥーベなど、もともと能力が高いのに今季は調子の波に乗れなかった打者が次々と復活している。スプリンガーなどは、ポストシーズンでの通算本塁打数を17本に伸ばしてきた。マニー・ラミレスの通算最多記録29本にはまだ遠いが、デレク・ジーターの20本や、バーニー・ウィリアムズの22本は射程圏内だ。

 チームの打撃成績を見ると、ヤンキースはほとんどの部門でトップを走っている。打率=2割7分6厘(2位はアストロズの2割6分)、本塁打数=14本(2位はレイズの12本)、打点=40(2位はアストロズの29)、OPS=.914(2位はレイズの.830)、長打率=5割4分7厘(2位はレイズの5割6厘)。漸落傾向ではあるものの、依然として強力な数字だ。ちなみに三振数=56(2位はブレーヴスの55)も最多。

チーム防御率は、勝ち残り8球団のなかで最悪の「6.14」

 ところが視点を変えると、ヤンキースの欠陥はくっきりと浮き彫りにされる。いうまでもなく、弱体投手陣だ。チーム防御率は、勝ち残り8球団のなかで最悪の6.14。ブレーヴスの1.13にはもちろんのこと、ドジャース(2.00)やアストロズ(3.40)やレイズ(3.80)にも大きく後れを取っている。

 この極端なコントラストが、今季のポストシーズンを特徴づけている。実力者をそろえるドジャースの打線が復活すれば(前日まで1割台だったが、7日には2割2分7厘に戻してきた)、開幕前の下馬評に応える力は十分だ。ヤンキースは……ゲリット・コール以外に信頼できる先発投手がいない(コールが登板するときの捕手はカイル・ヒガシオカに限定だろう)。アーロン・ブーン監督が、妙な奇策でデイビー・ガルシアを無駄遣いしてしまったのはまったく腑に落ちない。これならいっそ、ブルペンを連日総動員するほうがましだった。

 となると、戦前は伏兵と見られていた腕白チームのブレーヴスや、悪玉の汚名を晴らそうと心に誓うアストロズが浮上してくる可能性も出てくる。いずれにせよ、ここから先は、移動日なしの連戦がつづく苛酷なスケジュールだ。ポストシーズンを派手なアクション映画に仕立ててくれたのはヤンキースの功績だが、あの弱体投手陣では苦しい。まあ、駒のそろった球団でも投手陣は受難だ。いくら短いシーズンであれ、幕が下りたあとはへとへとに疲れ切ってしまうのではないか。

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