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ドラクエとコラボした決勝戦って? 全日本フェンシング選手権の“魅せる”演出がすごい 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byJapan Fencing Federation

posted2020/09/30 11:30

ドラクエとコラボした決勝戦って? 全日本フェンシング選手権の“魅せる”演出がすごい<Number Web> photograph by Japan Fencing Federation

男子エペ決勝ではRPG「ドラゴンクエストウォーク」とコラボし、リモート配信観戦の視聴者をワクワクさせた

生中継に、選手による裏解説も

 試合開始から終了まで、インターネットのAbemaTVによる完全生中継。昨年までと同様に、オープニングアクトから競技説明、決勝の生中継を放映する通常チャンネルに加え、別チャンネルでは剣先の動きや選手の動作をグラフィックでほぼ同時再現した、フェンシングビジュアライズド(可視化)を実現。さらに、スポーツエンターテイメントアプリ「PLAYER!」では、今大会にも出場した現役選手たちが裏解説で盛り上げた。

 決勝はライブイベント時には最大796席設置可能なニューピアホールに特設ピストを設営。LEDライトを天井にも仕込んだライティングで暗転したピストに立つ選手を浮き立たせ、観客がいれば視界の妨げになる場所でも配信ならば可能、とばかりに選手へ迫るカメラアングルで、映像もよりダイナミックさが増す。

 さらに男子エペ決勝ではロールプレイングゲーム「ドラゴンクエストウォーク」とコラボレーション。女子エペ決勝では試合直前に画面越しのリモートハイタッチや、選手の心拍数を計測し、離れた場所で観戦する家族は光る球体で選手の心拍数を感じられるなど、マッチスポンサーのNTT西日本がICT技術を用いた新たな観戦、応援方式を展開。試合直前と直後に7歳の息子とリモートハイタッチを交わした佐藤希望(大垣共立銀行)は「今までにない経験で、その場にいなくても後ろで応援されている気分だった」と笑みを浮かべた。

課題もあるが、大事なのは前に進むこと

 リモートならではの新しい観戦方式。フェンシングビジュアライズドを追求した映像は太田会長も「かなり挑戦的」と言うように、賛否はあるが、今はチャレンジの時。そう考えればすべてが肯定的に捉えられるが、今後を見据えれば避けて通れない課題もある。

 たとえば、出場者数を減らせば選手にとっては貴重な実戦の場がなくなるリスクが生じるように、協会側からすれば、選手が支払う大会参加費が減少する。無観客である以上チケット収入もなく、なおかつコロナ禍の今年度、数多くの大会が中止を余儀なくされていることから、試合に出る機会がないなら登録しなくていい、と日本協会への登録者数も大幅に減少し、そうなれば当然、協会へ支払われる登録費も減る。

 自社の技術や強みを存分に活かした前述のNTT西日本や、宅配サイトの「出前館」など新規開拓も含めた複数のスポンサー獲得や、大会前にはクラウドファンディングで資金を集めたとはいえ、コロナ禍で継続的な経済不況も予想される今後、いかに予算をねん出するか。フェンシングに限らず、多くのスポーツ協会、団体に共通する大きな課題でもある。

 だが、それでも大切なのは前に進むことだ。

 大会前には協会のホームページでの情報発信に加え、インスタグラムでは各種目、出場16選手のプロフィールと共に、それぞれの個性にちなんだキャッチコピーをつけ、選手を紹介。これは自らも全日本選手権の出場者である女子フルーレの西岡詩穂(エイジェックスポーツマネージメント)を中心に、現役選手たちが自ら行ったもの。

 同様に決勝当日の「PLAYER!」での解説も、西岡や男子フルーレの西藤俊哉(長野クラブ)、男子サーブルの徳南堅太(デロイトトーマツコンサルティング)が務め、「審判のクセを早く見抜いたほうがいい」といった選手独自の視点や、「大差で敗れた選手よりも僅差で敗れた選手のほうがより悔しそう」など、敗れた選手の心情を伝える言葉はまた違う味わいがあり、何より、フェンシングを盛り上げるべく、共通の意思が感じられるものだった。

【次ページ】 「ここにいる選手だけでは……」

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