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ドラクエとコラボした決勝戦って? 全日本フェンシング選手権の“魅せる”演出がすごい
posted2020/09/30 11:30
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Japan Fencing Federation
美しく跳び、剣をしならせ相手の背を突く。
ビクトリーポイントを鮮やかに放った男子フルーレ、松山恭助(JTB)がマスクを取り、雄たけびを上げる。完勝の喜びを体全体で表現する松山と、完敗に肩を落とす昨年の覇者、永野雄大(中大)。光に照らされたピストで浮き彫りになる勝者と敗者。
本懐を遂げ、4年ぶり2度目の優勝を決めた松山が言った。
「大会が始まる1カ月半前から外に出ず、誰とも会わず、これだけ追い込んで、本当に勝てるのか不安もありました。でもこれだけ仕上げても勝てなかったら、来年の東京オリンピックでメダルはほぼ不可能だと思っていた。狙って、優勝できたのはすごく自信になりますし、次のステップに進めた気がしています」
それはまさに、フェンシング日本一を決めるのにふさわしい舞台だった。
そこに、観客がいないことを除いては。
万全の対策を敷いて実現した全日本選手権
9月17日から3日間の予選を経て、26日に決勝戦が行われた「全日本フェンシング選手権」。新型コロナウイルスの感染予防、出場選手の安全を第一に考えて行われた大会は、予選から決勝までの全試合が無観客で行われた。
プロ野球やJリーグを除く五輪競技、特に接触を伴う対人競技は多くの大会が開催中止や延期を余儀なくされる中での全日本選手権の敢行。開催概要を発表した6月以降、感染拡大状況によっては中止の可能性もあったが、日本フェンシング協会では医科学委員会とアドバイザリー契約を締結した株式会社キャピタルメディカがガイドラインを作成。飛沫対策や接触予防に加え、出場選手は試合当日に1時間ほどで結果が出るSmartAmp法による検査を行うなど、万全の対策を敷き、開催実現に至った。