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ドラクエとコラボした決勝戦って? 全日本フェンシング選手権の“魅せる”演出がすごい
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byJapan Fencing Federation
posted2020/09/30 11:30
男子エペ決勝ではRPG「ドラゴンクエストウォーク」とコラボし、リモート配信観戦の視聴者をワクワクさせた
出場は上位16名、太田会長は「妥当」
とはいえ、当然ながら昨年までの全日本選手権とはさまざまな面で違いが生じる。
審判や役員の数は最小限に減らし、メディアも予選3日間は会場に入ることはできるが、選手との動線は完全に分け、消毒や検温を必須とし試合後の取材もオンラインで実施。出場選手も例外ではなく、各種目の検査から予選を1日で終わらせるためには、必然的に人数を絞らなければならないため、通常ならば各種目70名以上の参加者から、今大会は出場者を国内ランキングに基づき上位16名に限定した。
コロナ禍でも無事に全日本選手権を開催させるためにはこれが限度で苦肉の策とはいえ、大会前には出場を逃した選手や指導者、出場選手からも否定的な声が挙がったのも事実ではあるが、運営上はこれがギリギリ。太田雄貴会長はそう言う。
「(16名の出場人数は)感染予防の観点で見れば妥当だったと思います。選手の待機場所や、運営、試合の長さ、医科学委員会からも『これ以上多いと厳しい』という意見もあり、大会進行にも影響が生じます。出られなくなった選手のことを考えると胸が苦しいですが、一歩でも前に進むことが今は重要。将来的に、フェンシング、スポーツ界、そして来年のオリンピックに向けても意味ある大会にしたいと思っていますし、何より、予選の3日間、出場予定選手が全員出場できて、大きなケガもなく無事に終えたことが一番です」
状況を嘆くのではなく、できることを
太田が会長に就任した2017年以降、それまでは無料だった全日本選手権決勝のチケットを有料にし、東京グローブ座で開催した一昨年は40時間でチケットが完売。LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催した昨年も、2日間で5248名が足を運んだ。
ただ人を集めるだけでなく、お金を払う価値のあるスポーツエンターテインメントとして構築する。なおかつ選手にとっても「あの場所に立ちたい」と憧れ、モチベーションになるような国内頂上決戦を演出したい。その信念に変わりはない。
ならば、この状況を嘆くのではなく今できる形で、できることをやる。
無観客での決勝は、太田会長が「スポーツ界にとって面白く、新しい挑戦」と言い続けて来たように、リモート観戦ならではの利点を生かした、さまざまな試みが展開された。