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阿部慎之助ヘッドコーチ代行は原監督の“やりたい放題”!? 勝利と人材育成は両立するか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/09/18 11:50
ベンチから戦況を見つめる原監督(左)と阿部ヘッドコーチ代行。将来の監督候補として経験を積ませている
「その風景を見る心境はその時々で随分と変わっていく」
「最善策だって。最善策ということですよ」
試合後にその点を問われた原監督はこう話すのみで、多くを語ろうとはしなかった。
それでももちろん自分の後継候補の筆頭にいるのが阿部二軍監督であることは周知の事実である。これを機会に指導者として経験を積ませるチャンスとして、呼び寄せたことは明白だった。
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阿部二軍監督にしてみれば、つい昨年までは現役選手として見てきた東京ドームの一塁ベンチからのグラウンド風景のはずだ。
「人が人生や仕事で見る風景は変わることはないけれど、その風景を見る心境はその時々で随分と変わっていくものなんだよね」
“内野5人シフト”を敢行した采配を振り返った
原監督がこんな風に、立場、経験による世界観の変化を語ったことがある。
阿部二軍監督本人は昨年は「半分はコーチの気持ちでベンチから試合を見ていた」(阿部)と語っていた。二軍監督となった今季もファームの試合で東京ドームの一塁ベンチから指揮を執った経験もある。それでも一軍の指導者として、ベンチから見る東京ドームのグラウンドの風景はこれが初めてのはずだった。
そういう経験をすることの意味。
同じ「景色」という言葉を使って、原監督がその意味を説明したことがある。
2度目の監督時代の2014年7月11日の阪神戦でレフトの亀井善行外野手を内野に移動させて“内野5人シフト”を敢行した采配を振り返った時だった。
「実際にそういうシチュエーションで守ってみることで、選手が次に違ってくる。例えば(阿部)慎之助(捕手)はどういうリードが必要なのかとか、経験できて考える材料が増えるはずです。守っている選手たちも、一度、やってみることで本番で見えてくる『景色』が変わるはずなんだ。そういう経験を積ませるチャンスだと思った」