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奪三振率「16.25」! モイネロがソフトバンクで史上最強級ドクターKに進化の理由 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/09/14 08:00

奪三振率「16.25」! モイネロがソフトバンクで史上最強級ドクターKに進化の理由<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

奪三振率は10台でも十分凄いが、モイネロが残している数字は驚愕と評して過言ではない。

佐々木、サファテ、藤川ら名リリーフが

 史上1位は、日本一に輝く前年の横浜、佐々木主浩の14.85。この年38セーブで3回目の最多セーブに輝いている。

 続いて2015年ソフトバンクのサファテ。41セーブで初の最多セーブ。以下、救援投手がずらっと並ぶ。それぞれ一時代を築いたセットアッパー、クローザーだ。

 なお100イニング以上投げた投手では、これまで1998年のヤクルト石井一久の11.05(196.1回241奪三振)が最高だったが、2019年にソフトバンク千賀滉大が11.33(180.1回227奪三振)と更新した。

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 単純計算で、K9が13.50を超えれば、アウトの半数以上を三振でとったことになる。ここに並ぶ数字だけでもすごいのだが、今季のモイネロの記録は、これら過去の投手の記録からも頭ひとつ抜けている。

NPBに来てから奪三振の割合アップ

 モイネロはキューバ出身。MLBを経由せずにNPBに来た。

 キューバでは17歳からトップリーグで投げている。将来を嘱望された投手ではあったが、CNS(キューバ・ナショナルシリーズ)でのK9は、通算で8.66(245.1回236奪三振)だった。つまり、NPBに来てから奪三振の割合が伸びたのだ。

2017年 9.08
(35.2回36奪三振)
2018年 11.23
(45.2回57奪三振)
2019年 13.04
(59.1回86奪三振)
2020年 16.25
(34.1回62奪三振)

 まさに長足の進歩だ。

 奪三振とともに注目すべきは、与四球である。

 9回あたりの与四球数「BB9」を見ると、キューバ時代のモイネロは3.93(245.1回107与四球)。ひどいというわけではないが、決して制球が良いとは言えない数字ではある。しかしNPBに移籍後の通算も4.11(175回80与四球)と改善していない。

 最近、NPBの投手コーチは投手に「ああしろ、こうしろ」と言わないのが主流になっている。そして短所を治すのではなく、長所を伸ばすことが主眼になっている。モイネロもやや難があった制球力を矯正するのではなく、まだまだ伸ばせそうな長所だった奪三振能力をアップさせることに力を注いだのだろう。

 そういう意味ではソフトバンクという先進的なチームに入ったことの意味も大きい。

【次ページ】 158kmの速球を“見せ球”にできる

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