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窮地のJ1湘南が息を吹き返すには?
「悪くないのに勝てない」は深刻だ。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/23 08:00
「勝ち点を取ることが重要だ」と語る金子大毅。低迷する湘南で力を存分に発揮できるか。
かつての迫力が失われてしまった。
名古屋とチーム力を比較すると個人能力には差がある。過去、湘南は豊富な運動量と走力、連動した攻撃で戦闘レベルを押し上げて個の能力が高いチームを打ち破ってきた。選手の顔ぶれが変わっているのでまったく同じことを望むのは難しいが、2年前は今よりも攻守ともに迫力があった。試合に勝ち、自分たちのサッカーに自信を持つことでそれがどんどん膨らんだ。自分たちの流れで攻撃に転じた時は2次、3次と攻撃がつづき、その面白さがファンに伝わるとスタジアムは大いに沸いた。
19日の名古屋戦ではコロナ禍の影響で入場が制限されているとはいえ、決定機に声は上がるものの熱気のボルテージはそれほど上がらなかった。地域密着型のクラブである湘南には長年見ているファンが多い。本当にいいときを知っているだけに、スタジアムのムードからもチームに物足りなさを感じているのは容易に察することができた。
これだけやって勝てないと思うと。
試合後、金子は「もったいない。勝負強さが足りない」とガッカリした表情を見せた。浮嶋敏監督は、「シュートの精度に取り組んでいく」と試合後語った。今の湘南が心配なのは「このままでいいのか」という不安が選手間で膨らみ、自信を失ってしまうのではないかということだ。
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名古屋戦に向けて守備面を修正し、内容も悪くなかったのに勝てなかったことのダメージは決して小さくはない。これだけやって勝てないと思うともう後がなくなり、選手は追い詰められてしまう。
カンフル剤を打つという手もあるが、財政的に苦しい湘南が効果的な選手を獲得するのはそう簡単なことではない。指揮官の交代は最後の手段だが、湘南のサッカーの継続性を考えると果たして適任者がいるのか。
今の湘南は、攻守ともにやろうとしていることがある程度できている。戦う姿勢も見えている。さらに修正しようと考えがちだが、連戦がつづく中あれもこれも良くしようとすると選手は混乱する。
ひとつのことを徹底させて試合に臨むことは、チームが変わるきっかけになる。