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アテネ体操金・米田監督の徳洲会改革。
「普通のルートは崩壊しつつあるから」
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph byAFLO
posted2020/08/21 10:35
昨年の世界ジュニア体操男子代表決定戦で、岡慎之助(右)と談笑する米田功監督。
通信制高校、大学を活用して体操に専念。
石澤大翔はじめ未成年の選手たちを入団させるようになったのも新たな一手だ。
「強くなる人間はどこに行っても強くなるんです。大学に行って競技をするか、プロに行ってお金をもらって競技をするか。野球でもサッカーでも高卒でプロの世界に入る選手はいますよね」
石澤や岡はフルタイムで体操に専念しながら、星槎グループの通信制の高校、大学で学業を続けている。石澤などは日々、練習後の空き時間にレポートを作成し、提出。週1回、神奈川県内のキャンパスに実際に通ったり、オンラインで、体育の教職資格を取得するために学び直している社会人学生らと一緒に講義を受けている。
「これから学び方は多様になってくるし、その気になれば勉強は大人になってからもできます」と米田。自身も中断していた大学院での勉学をもう一度始め、実践しているだけに説得力がある。
「一般社会でも大学に行って、企業に定年まで勤めるといった普通のルートが崩壊しつつありますから」
若手の採用は戦力としての期待があるのはもちろんのこと、体操選手のキャリアを多様化できないかという試みでもあるのだ。
ジュニアや高校の指導者を尊重。
8月初旬のある日、米田は付きっきりで岡にひねりの指導をしていた。トランポリンで宙返りをする岡に、米田もやって見せては動きと感覚を話し合う。
徳洲会の午前のトレーニングは10時から始まるが、石澤や岡はその1時間以上前から体育館に来て動き出し、午後も居残り練習に汗を流す。時折、石澤を清風高に、岡をおかやまジュニア体操スクールに帰し、発達段階の心技体について、当時の指導者らと情報を共有することも重視している。
「ジュニアや高校の選手を指導する先生方の熱量は圧倒的です。そこでやっていることを自分たちが引き継いで選手が停滞しないように伸ばしていく。徳洲会としても、そこから教わり、知見を取り入れていくことが大事なんじゃないかと思うんですよ」