酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
山崎康晃と藤川球児は立ち直れるか。
クローザー受難を示す、ある数値。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by(L)Naoya Sanuki/(R)Kyodo News
posted2020/07/27 19:00
失点がかさんでいる山崎康晃(左)と藤川球児。偉大な実績を築き上げた2人が、このまま苦しむとは思えないが……。
12度の登板で8度は無失点だが。
そして7月26日。横浜スタジアムの広島戦は先発・平良拳太郎の好投で、7回まで6-0の楽勝ムードだったが、中継ぎがあっという間に失点して6-5で最終回を迎える。ここで安打と四球で無死一・二塁とされ、鈴木誠也のセンターフェンス直撃の安打で同点。ラミレス監督は続投させたが、結果は会澤翼に満塁本塁打を打たれてしまった。
山崎は今季12度目の登板。このうち8度は無失点に抑え、リーグ最多の6セーブ、1ホールドを上げている。しかし3度の救援失敗によって、クローザー失格の烙印を押されかねないピンチに立たされてしまった。厳しい商売だ。
前年から気になっていたのは、ある指標の悪化だ。
FIP(Fielding Independent Pitching)という、セイバーメトリクスの指標である。「運の所産」とされる「本塁打以外の被安打」の要素を取り除いた、投手の「真の実力」の数値とされる。
この数字が防御率より良い投手は、運に恵まれていない可能性があるとされる。逆に防御率より悪い投手は、たとえ好成績でも「運の所産」だとされる。
そしてFIPが防御率より悪い投手は、運によって成績が上がっていると考えられるので、いずれ防御率も悪化すると考えられている。
各シーズン、山崎のFIP推移。
以下、山崎康晃のデビューから今年までの防御率とFIPの推移である。
2015年
防御率1.92 FIP 0.42
2016年
防御率3.59 FIP 2.45
2017年
防御率1.64 FIP 0.51
2018年
防御率2.72 FIP 1.69
2019年
防御率1.95 FIP 2.23※
2020年
防御率8.74 FIP 5.34
山崎は1年目からクローザーとして活躍してきたが、FIPはずっと防御率よりも低かった。運ではなく実力で成績を上げてきていたのだ。
しかし、※印で示した2019年、FIPが初めて防御率よりも数値が悪くなった。昨年は「運」に助けられて成績を上げた部分もある。だから今季は成績が悪化する可能性があったのだ。