酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
山崎康晃と藤川球児は立ち直れるか。
クローザー受難を示す、ある数値。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by(L)Naoya Sanuki/(R)Kyodo News
posted2020/07/27 19:00
失点がかさんでいる山崎康晃(左)と藤川球児。偉大な実績を築き上げた2人が、このまま苦しむとは思えないが……。
クローザーはセットアッパーと別物。
クローザーは、
・適任者がなかなか見つからない
・登板過多で壊れる懸念がある
という難儀なポジションである。
どんなに球が速くても、もしくは制球力があっても、それだけではクローザーになれない。セットアッパーはよく似たポジションだが、ここで好成績を上げたからといって配置転換しても、うまくいかないことが多い。
史上最多の344ホールドを稼いでいる日本ハムの宮西尚生は、通算だとたった3セーブ。この2つのポジションは別物なのだ。
何よりクローザーは激務だから、いつ故障をしても、不振に陥ってもおかしくない。
広島は2018年まで中崎翔太という優秀なクローザーがいた。しかし2019年に不振に陥り、そこからクローザーを固定できないままに現在に至っているのが象徴的だ。
なお山崎康晃も2017年にはブロウンセーブが続き、一時期パットンにクローザーの座を譲って再び復活している。今回もそうなる可能性はあるだろう。
レギュレーション変更も影響か?
今季、クローザーの受難が続いているのは、新型コロナ禍でペナントレースのレギュレーションが大きく変わっていることも影響しているかもしれない。
試合は120試合しかないから序盤戦でのダッシュが重要になる。しかも延長戦は10回までだ。勝つために早い勝負を仕掛けるようになる。
昨季のサヨナラホームランは両リーグ合わせて19本だったが、今季はすでに5本、7月だけで4本出ている。また満塁ホームランは今季13本、昨年は合計47本。現時点の試合数は昨年の2割程度だから、かなり増えている。
とりわけ先週のセ・リーグは18試合で52本ものホームランである。これが山崎など救援投手の被弾につながっている。長距離打者でなくても、思い切って勝負に出る打者が増えたということかもしれない。
クローザーが9回を抑えきって挙げる雄たけびは胸がすく。山崎康晃や藤川球児は、再び雄たけびを上げることができるだろうか?