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藤井聡太棋聖、タイトルのその先に目指す“景色”。
「将棋に巡り合えたのは運命、強くなるのは使命」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by日本将棋連盟
posted2020/07/16 21:40
藤井聡太棋聖(撮影別日)
「今の時代においても将棋界の盤上の物語は不変のものだと思いますし、自分自身、それを伝えられたらと思います」
対局後の記者会見でAIと棋士の関係について聞かれるなかで、藤井聡太新棋聖はこのようなことを語っていた。
7月16日、藤井七段がヒューリック杯棋聖戦5番勝負第4局で渡辺明棋聖(棋王・王将と合わせて三冠)に勝ち、3勝1敗で新棋聖の座に就いた。
これで「17歳11カ月」でのタイトル獲得となり、これまでの史上最年少記録だった、屋敷伸之九段が30年前に達成した「18歳6カ月」を大きく更新することとなった。
ただし、藤井棋聖が目指すものはまだ遥か先にあるのだろう。デビュー当時から、常々将棋が「強くなりたい」という目標を口にしてきていた。
たとえば、Number942号(2018年1月4日)「驚異の1年を振り返る 藤井聡太『栄光とスニーカーの頃』」では次のような言葉が紹介されている。
「将棋を指すために生まれて来たかどうかは分からないですけど、将棋に巡り合えたのは運命だったのかなと思いますし、将棋を突きつめていくこと、強くなることが使命……使命までいくか分からないですけど、自分のすべきことだと思います」
そのうえで、目指すべきところをこう語っている。
「強くならないと見えない景色があると思いますので、そこに立てるように強くならなきゃいけないと思っています。将棋は奥が深いので、強くなっても、強くなった先にある奥深さを見ていたいです」(同記事より)
常人には想像もできない「景色」ではあるが、おそらくその「将棋の奥深さ」を最も見ているのは将棋界の“生ける伝説”羽生善治九段だろう。
同一年度に「七冠」獲得、「永世七冠」、タイトル通算99期など、数々の偉業を成し遂げてきた。
羽生九段がおよそ30年をかけて見てきた「強くなった先にある奥深さ」を見るために、藤井棋聖もその第一歩を踏み出したばかりと言えるのかもしれない。