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バレットにマピンピ、レイドローも。
ラグビーW杯が世界に広めた日本愛。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/07/09 20:00
ボーデン・バレットは紛れもなく世界最高クラスのスタンドオフである。彼らが日本をプレーの場として選ぶ時代になったのだ。
ダン・カーターもいたのだから。
世界的なビッグネームがトップリーグのクラブに加入するのは、B・バレットやマピンピが初めてではない。'18-'19シーズンに優勝を飾った神戸製鋼には、ワールドラグビー年間最優秀選手を3度受賞した元ニュージーランド代表ダン・カーターがいた。
新型コロナウイルス感染拡大で不成立となった2020シーズンも、ダン・カーターだけでなくニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのW杯プレーヤーが数多くプレーしていた。南半球のプロチームが参加するスーパーラグビーとシーズンが重ならないことから、母国と日本の行き来がスムーズという側面もあった。
これが北半球のリーグになると、シーズンはほぼ同じになる。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランスなどの代表選手が、日本行きへ踏み出すには障害が多い。物理的にも精神的にも距離が遠い極東の島国を、自らのキャリアを捧げる場所に選ぶケースはほとんどなかったと言っていい。
それがどうだろう。
昨年のW杯で準優勝したイングランドのジョージ・クルーズがパナソニックワイルドナイツの一員となったのだ。198センチ、123キロのサイズを誇る30歳のロックは、'15年と'19年のW杯に連続出場し、'19年は主にリザーブから6試合でピッチに立った。
パナソニックにはウェールズの代表選手も加わった。ニュージーランド出身のハドレー・パークスで、昨年のW杯では12番を着けて6試合に先発出場した。欧州6カ国対抗戦のシックスネイションズでも活躍した32歳は、力強く経験豊富なセンターである。
ジャパンと5度戦ったあの選手も。
日本に馴染みのある選手も、トップリーグの舞台に立つ。スコットランドのグレイグ・レイドローが、NTTコムことNTTコミュニケーションズシャイニングアークスのユニフォームに袖を通すことになった。
代表通算76キャップを誇る34歳のスクラムハーフは、'15年と'19年のW杯を含めて日本代表と5度対戦した。'16年6月に豊田スタジアムと味の素スタジアムで行われたテストマッチでは、ペナルティゴールやコンバージョンキックを確実に成功させ、スコットランドに勝利を引き寄せた。
'19年のW杯の日本戦でも、2本のコンバージョンを決めている。スクラムハーフとしてのゲームコントロールはもちろん、優秀なキッカーとして名を馳せてきた。
スコットランド代表ではキャプテンも務めた。クラブレベルでもフランスのクレルモンなどでキャリアを積んできた彼は、チームをまとめるリーダーシップも備えている。