ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
女子ゴルフ開幕戦のYouTube配信。
5日間677万3987回再生はすごい?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAtsushi Tomura/Getty Images
posted2020/07/08 20:00
テレビ中継ではなく、インターネット中継となった開幕戦。渡邉彩香が優勝を決めたプレーオフでは24万以上の接続台数を記録した。
テレビとネットの融合。
そこへ来ると確かにネット放送はすでに、テレビ中継をしのぐようでもある。ただし、今後すぐに両者の立場が入れ替わるかは疑問が残る。
メディアを通じた収益のもとになる数字的価値が今のところ対比しづらく、アース・モンダミンカップの数値を、従来のテレビ視聴率に換算することが困難なのだ。リサーチ会社、広告代理店もネットとテレビの関係性を示す新しい指標づくりに躍起になっているところ。そもそも、テレビ視聴率そのものの基準も揺らいでいる。現代人の生活スタイルに合わせ、これまでの「世帯」視聴率から「個人」視聴率に、ネットデバイスのようにパーソナルな数字への重要性が問われるようシフトされつつある。
ネットとテレビはそれぞれに優れた点があり、利用する層も異なる。だからこそ比較が難しい。演出面などの放送の“質”においても違いがある。ゴルフに限定すれば、従来の短時間の録画放送ではもうファンが満足しない。一方でネットだけに傾倒すれば、“マス”から離れた市場全体がシュリンクする恐れもある。最先端を行くメディアほど2つの融合に取り組んでいるのが現状だ。
放映権を使ったビジネスの構築。
20年にわたる試行錯誤を繰り返し、たどり着いた今回のネット放送が示したのは、まず“のべ”デバイスの数の興奮を視聴者に届けたこと。放送枠にとらわれずに72ホールの完遂を実現させ、改めて生中継の魅力を伝えたこと。そして、他のトーナメント主催者に、放送手段の選択肢を増やしたことだ。それは今後、各スポンサーの大会開催の意義、態度そのものすらも問うものでもある。
JLPGAはここ数年、主催者と各テレビ局に対し、ネット配信構想を楯にツアーが“放映権”(施設管理権と肖像権を根拠にしたもの)を一括管理することを要求してきた。海外ツアーに倣うかたちで、権利の販売、映像プロモーションにより経営基盤を充実されるのが目的。そうであれば主催者の全面バックアップを得た今回こそ、映像素材を使ったビジネスモデルの構築ステップを、周囲に示したい。
改革は、トップの大号令だけでは不十分。ブレーンとなるべき周りが、率先して数字分析を進め、プロゴルフの魅力を可視化しない限り、お金を出す側、既得権を持つ側は納得しない。放送の価値基準が揺らいでいる今だからこそ、理性的な交渉が求められる。
そういう時代である。
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