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モウリーニョの毒とリアリズムと、
ロマンチックなインテル3冠の結末。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/05/22 15:00
ビッグイアーを掲げるサネッティ。モウリーニョ率いるインテルにとって史上最高の時が訪れた瞬間だった。
サネッティが回想する表彰式。
あれから10年が経ち、スーツ姿がすっかり馴染んだサネッティ副会長は、表彰式のことを回想する。
「優勝カップを掲げた瞬間、サネッティという男の人生が見えたんだ。アルゼンチンでの子供時代からあの決勝戦まで、私のサッカー人生が走馬灯のように脳裏に駆け巡った。最高の夜だった」
“トリプレーテ”の後、インテルの会長は2度変わった。
ベンチに座った監督の数は十指では足りない。
今シーズン、モウリーニョの再来と期待されて招かれた現監督アントニオ・コンテは、あの3冠チームにどこまで近づけるだろうか。
栄冠から2日後の夕食会で……。
モラッティは今でも笑顔で思い出す。
マドリードでの栄冠から2日後、モウリーニョを自宅での夕食に招いた。
富豪の晩餐には豪華な燭台やフラワーアレンジメントが付き物だ。その夜、モラッティがおごそかな食卓の中央に飾ったのは……白銀のCL優勝カップだった。
自宅で“ビッグイヤー”を愛でながらの晩メシだなんて、これぞサッカーロマンの極みだろう!
2人のロマンチストは世界中のサッカーファンの夢を叶えた。その夜、彼らの食卓からはいつまでも笑い声が絶えなかったという。