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JFA田嶋会長が語る「サッカー界が
スポーツ競技団体に貢献できること」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/05/14 17:00
3月上旬、欧米出張から帰国後、新型コロナウィルスに感染したことがわかり、18日間入院、現在は健康を取り戻している田嶋幸三氏。
「来年、私たちは創設100周年を迎えます」
――Jリーグの中断に続き、日本代表戦もカタールW杯アジア2次予選が延期、親善試合も中止となりました。代表戦が開催できなくなったことで、JFAとサッカー界全体はどんなダメージを受けましたか。
「ダメージはもちろん大きいです。多くのパートナーさんたちは、試合があるからこそ我々をサポートしてくださっているのは事実ですし、観戦チケットの売り上げがなくなることも大きな痛手です。
ただ、これは当たり前のことですが、新型コロナを克服することが最重要です。まずはこれを克服して、みんなで笑顔になるために協力しなければならない。
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来年、私たちは創設100周年を迎えます。コロナ禍が収束して、再び代表戦を行える状況になれば、ぜひ良い試合を組みたいと思っていますし、世界中のレジェンド選手に集まってもらって、日本で試合ができたらなとも考えています。
今回の新型コロナ禍は、ある意味、我々の理念にもあるとおり、世界中が平和で、安全で、人々が健康だからこそスポーツができるんだということを、今一度知らせてくれたように感じます。これは我々への警鐘だったのかもしれない。今後のスポーツ界のビジネスは、大きく様変わりしなければならないと思います。そこに付いていけない組織は、置いてきぼりになる。サッカー界がそうならないように、新たな方向性をしっかりと見出していかなければなりません」
「サッカーボールをたくさん作って世界中に」
――「ビジネス」と「健康促進」の両立。具体的にはどんなことをイメージしていますか。
「スポーツによって国民の健康を促進することは、公益財団法人である我々の大きな役目です。ジュニアからシニアまで、男女も問わずしっかりと取り組んでいきたい。
今、私は1日1回、近所を散歩しているのですが、そのときによく目にするのが、お子さんが1人でリフティングをしていたり、お父さんとボールを蹴る姿です。そんな光景を見ると、すごく嬉しくて。ある企業さんが毎年発表している子供たちの『大人になったらなりたい職業』調査でも、2年連続でサッカー選手・監督が1位になりました。これも嬉しかった。今回、あらためてみんなが自由にサッカーを楽しめる環境を守る責任を感じました。
サッカーはボールが1つあれば、誰でも楽しめるスポーツです。来年の100周年に向けて、いろんなプランを計画していたのですが、その中の1つに、サッカーボールをとにかくたくさん作って、日本国内だけでなく世界中に配ることを考えていました。予算内でどれだけのことができるかはわかりませんが、ボールを蹴る子供たちの姿を見て、この計画は必ず実現させようと思っています」