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JFA田嶋会長が語る「サッカー界が
スポーツ競技団体に貢献できること」 

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松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2020/05/14 17:00

JFA田嶋会長が語る「サッカー界がスポーツ競技団体に貢献できること」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

3月上旬、欧米出張から帰国後、新型コロナウィルスに感染したことがわかり、18日間入院、現在は健康を取り戻している田嶋幸三氏。

「一番大切な人材やインフラを絶対に死守」

「国が1人1日上限8330円を支給する雇用調整助成金という制度はあります。しかし、例えば12歳以下の子供たちを指導しているサッカーチームやクラブは、8割以上が任意団体です。法人格を持っていないから、雇用調整助成金を申し込むことができません。こういう街中で一生懸命サッカーを教えている人たちがいなくなってしまったら、これは大変なことだなと。今まで何十年もかけて培ってきたものが、壊れる時は一瞬にして倒産し、指導者がいなくなってしまう。もう一度作り直そうとしたら、大変な時間がかかります。

 コロナ禍を乗り越えて、いざ子供たちがサッカーを再開しようとしても『もうあのクラブはなくなっちゃったらしいよ』『もうあのコーチは別の仕事を始めたらしいよ』となる可能性もある。

 だからこそ、我々にとって一番大切な人材やインフラを絶対に死守しなければならないと思ったんです」

――支援窓口へ申請、審査が通れば、どれくらいの期間でクラブにお金が渡るのでしょうか。

「営業日で数えて、5日から10日で振り込まれるようにしたい。国の雇用調整助成金の場合、給付されるのは2カ月先だと聞きました。それだと、潰れてしまうクラブが出てくる。5月12日時点で、すでに60を超えるクラブから申請が届いていますから、なんとか5月25日の給料日までに融資できればと思っています」

――給付ではなく、融資とした理由は。

「融資か、給付か。これについてはかなり議論しました。ただ、残念ながら我々にはすべての申請クラブに給付できるほどの原資がありません。50のクラブに200万円ずつを給付するとしたら、それだけで1億円かかってしまう。この先、JリーグやJFL、なでしこリーグやFリーグ、日本ビーチサッカー連盟、さらに大学連盟や社会人連盟などへの支援が必要になります。そのための原資も取っておかなければなりません。それでも足りない場合は、日本サッカー協会が借金をしてでも支援する覚悟があります」

「Jリーグが開催されることが非常に重要」

――今後、各リーグや連盟を支援していく中で、支援の優先順位を決める基準はありますか。

「優先順位については私ひとりの考えだけでなく、Jリーグの村井満チェアマンやJFAの岩上和道副会長、林義規副会長、須原清貴専務理事らと話したり、また審査をする特別委員会でも話し合って決めていかなければなりません。各地域の状況も見極める必要があります。

 ただ、私はJリーグが開催されることが、非常に重要だと思っています。その理由は、我々の日本代表チームの母体がJリーグであること。そして、totoの対象であるJリーグが再開されることで、スポーツくじの売り上げがサッカー界だけじゃなく、スポーツ界全体に大きく影響するからです。東京五輪が1年延期となって、スポンサー収入が今後どうなるかもわからない状況です。

 各競技団体が頭を悩ませているのは、トレーニング施設の維持費や選手の強化費でしょう。その基盤となるスポーツくじを再開させるためにも、我々はJリーグを支援しなければならない。これが、サッカー界が各スポーツ競技団体にできる貢献のひとつだとも思います」

【次ページ】 「来年、私たちは創設100周年を迎えます」

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田嶋幸三
日本サッカー協会
JFA

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