メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
MLBが再開へ向けた「見切り発車」。
リーグの形を変える大胆な決断。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/05/03 11:40
ルールもリーグも、理由があれば躊躇なく大胆に変更する。その柔軟さがMLBの魅力の1つだろう。
移動距離を縮めることでリスクをへらす。
キャンプ地別にフロリダ州のグレープフルーツ・リーグ、アリゾナ州のカクタス(サボテン)・リーグに分かれての「今年限定のリーグ再編」は興味深いが、感染拡大の防止に移動のリスクを最小限に抑えることと、選手たちが「シーズンの半分は家から職場(球場)に通う」ことを両立させるには、「1リーグ3地区制」が理に適っている。
もともと、MLBは日本プロ野球のように公共の交通機関を使用するわけではなく、飛行機もバスも電車もチャーター便なので、普通の旅行客に比べて移動のリスクは少ない。
裏方さんを含むチーム全員と、彼らが移動の際に接触する可能性の高い飛行機の添乗員や運転手、クラブハウスの警備員、あるいは遠征先のホテルの従業員といった人々の日常的な検査を徹底できるのなら、そのリスクはさらに少なくなるだろう。
同じ都市なのにリーグが違うチーム。
そして何よりも、1つの都市や地域にア・リーグとナ・リーグの2球団が同居しているシカゴやサンフランシスコ(オークランド)、ロサンゼルスなどはリーグの垣根を取ることで間違いなく、「移動のリスク」が減る。
次に(異なる地区との交流戦が皆無という前提だが)ニューヨークからシカゴ、シカゴからロサンゼルスといった長距離移動で、チーム関係者が飛行機の中に3時間も4時間も閉じ込められることもなくなる。
同じ東地区のニューヨークとフィラデルフィア間、フィラデルフィアとボルティモア、ワシントンDC間はそれぞれ電車で2時間以内だし、ボストンとニューヨーク間も飛行機なら1時間前後で済む。
大谷翔平選手が所属する西地区のエンゼルスも、チーム名はロサンゼルスとなっているものの、実際の本拠地は同都市の南部アナハイムにあるので、パドレスの本拠地サンディエゴまではバスで1時間半ぐらいで往復できる。他球団もロサンゼルスで2シリーズ戦った後にサンディエゴで1シリーズ戦うというような予定を組めれば、移動のリスクはさらに減らせるわけだ。