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旗揚げ戦に鈴木みのるも参戦!
配信特化プロレス『チョコプロ』とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by(C)Chocopro
posted2020/04/30 20:00
斬新なアイディアで常に話題を提供するさくら(後列左)。4月25日の大会ではAEW参戦経験のある実力者・水波綾と対戦した。
チョコプロは「小さいままで大きくなる」。
大会を重ね、改善するうちに運営に関わる人数は減っていった。
カメラは1つだけ。しかもカメラマン兼実況は出場選手が交代で担当する。レフェリー、リングアナも選手の役目だ。
そうしたことから生まれる親密感もチョコプロの魅力と言っていい。レギュラー参戦しているアントーニオ本多の、英語と日本語と分かる人には分かるギャグをミックスした実況は、早くもチョコプロ名物になっている。
「コアメンバーは私と(駿河)メイ、アッキの3人。小さい会場で少人数でやっても、YouTubeで世界中の人に見てもらえる。この形なら“小さいままで大きくなる”ことができそうだなと思ってます」
世界にアピールし、ビジネスとしては大きくしていきながら親密感を保つ。自分たちでコントロールできないほどの大所帯にはしない。チョコプロはそういう試みでもある。
ライバルはヒカキンやはじめしゃちょー?
4月25日の大会は、朝10時からのスタートだった。より正確に言うと「21:00 EDT(東部夏時間の21時)」だ。アメリカのファンが金曜夜にリアルタイムで見るための配信だったのである。
「視聴者の比率を見ると、約半分が海外のファンなんです。アメリカのファンは、いつも朝方に見てスーパーチャット(ネットによる投げ銭)もしてくれる。そういう人たちに“いつもありがとう”という気持ちでこの時間にやってみました。あとは“アメリカのシェアも取りに行くぞ”と」
気持ちとしては団体設立という以上に“Webエンターテインメントへの新規参入”だ。そうなるとライバルは他のプロレス団体よりもヒカキンやはじめしゃちょーですかと聞いてみると、さくらは言った。
「あ、そうかもしれないです。でもYouTube界ではまだ超底辺なので(笑)。まずは(大会を配信している)我闘雲舞チャンネルに登録してもらうところから」
今しかできない苦肉の策ではなく、もっと大きな時代の要請の中で「プロレスラーとしての新しい仕事を創っているつもりです」とさくら。チケット収入にも登録課金制にも頼らないビジネスモデルを軌道に乗せたいという思いも強い。
「誰でも無料で見られるプロレス。考えてみたら昔のテレビ中継と同じですよね。お金がある時もない時もプロレスに寄り添ってほしい。世界中どこにいてもプロレスを楽しんでほしい。そのためのチョコプロなので」
いずれ我闘雲舞の興行が再開できる日がきても、チョコプロは続けていくつもりだ。さくらは今年8月でデビュー25周年を迎える。その記念試合も、チョコプロで配信する予定だという。