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モンベルが不織布で防護服を縫製。
辰野会長「2300セットつくります」 

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千葉弓子

千葉弓子Yumiko Chiba

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photograph byMontbell

posted2020/04/28 18:00

モンベルが不織布で防護服を縫製。辰野会長「2300セットつくります」<Number Web> photograph by Montbell

医療用の防護服をミシンで製作する、アウトドアメーカー・モンベルの辰野勇会長。

素材は寝袋カバーのための「タイベック」。

 選んだ生地は米国デュポン社が開発した高密度ポリエチレン不織布「タイベック」。軽量で引き裂きなどにも強く、アウトドア愛好家にはおなじみの素材だろう。実はタイベックは医療現場のほかアスベストや放射能、化学物質を扱う現場などで活用されている。福島原発や欧州のコロナ治療現場でも使われている素材だ。

「ちょうど来春に発売予定だった寝袋カバーのためにストックしておいたタイベックがあったんですよ。そのほかからも調達して、2300セットほどつくります」

 会長自らがミシンをかけてプロトタイプをつくるのには驚かされたが、実はもともと手づくりが得意。いまのように山道具が簡単に手に入らなかった20代の頃には、クライミング用のロープを古い麻に亜麻仁油を染みこませてつくったり、ロープと体を繋ぐハーネスも自分で縫ったりしていた。

 その頃の創意工夫が、モンベル誕生へと繋がっている。

 ないものをつくる。命を守る道具をつくる。その行為は、登山メーカーの原点でもあるのだ。

使用後の防護服をどれだけ触らず脱げるか。

 辰野が語る。

「一番気を遣ったのは、できるだけ防護服に手を触れずに脱着できるデザインであること。ポンチョのような被る形ならもっと製作しやすいのだけれど、それだと脱ぐときに汚染された布が顔の横を通ってしまう。これは非常に危険なことなので、背中で生地を重ねたデザインにしました」

 紐はたすき掛けにして前で結ぶ仕組み。チベットやモンゴルの民族衣装にデザインが近いと辰野はいう。

【次ページ】 阪神淡路大震災で生まれた「アウトドア義援隊」。

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#モンベル

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