沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
デアリングタクトの桜花賞完勝劇。
この衝撃はまさにアーモンドアイ級。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2020/04/13 11:40
馬場状態、展開が変わっても勝ち馬は変わらないのではないかと感じさせるほどの強さを発揮したデアリングタクトと松山弘平。
「この馬なら届くと信じていた」
前半3ハロン通過は34秒9、4ハロン通過は46秒5。馬場状態を考えると、かなりのハイペースだ。
馬群がバラけて縦長になり、デアリングタクトが外に進路を取りやすくなった。
「ポジションはあまり意識せず、馬のリズムを大事に乗ろうと思っていました」と松山。デアリングタクトが外に出たときには、先頭との差は10馬身ほどにひろがっていた。
「前はかなり離れていたのですが、この馬なら届くと信じていました」
そう話した松山が軽く促すと、3、4コーナーを回りながら差を縮めていく。
一方レシステンシアは、溜め逃げをして弾けなかった前走のチューリップ賞(3着)とは異なり、4コーナーを仕掛け気味に回ってロングスパートをかける。武の手が動き、気合をつけながら内のスマイルカナに並びかけ、直線に向いた。後続に脚を使わせる、この馬本来のレースだ。
スマイルカナがわずかに先頭。外にレシステンシアが併せ、後ろを離して叩き合う。
レシステンシアが一気にかわすかに見えたが、スマイルカナが食い下がる。
5馬身以上あった差をぐいぐいと……。
デッドヒートを繰りひろげるこれら2頭の後ろから、デアリングタクトが猛然と追い上げてくる。直線入口では5馬身以上離されていたのだが、1完歩ごとに差を詰める。ラスト200m地点で3番手の馬を抜き去り、さらに脚を伸ばす。
ラスト100mを切ったあたりで、デアリングタクトは手前を右に戻し、もう1段ギアを上げた。凄まじい脚で内のレシステンシアとスマイルカナをかわし、先頭でゴールを駆け抜けた。
これで3戦3勝。重賞初勝利をクラシック制覇で飾った。デビュー3戦目での桜花賞制覇は、戦後、2歳戦が行われるようになってから、1980年ハギノトップレディ以来40年ぶり3頭目の最少タイ記録。2004年ダンスインザムード以来16年ぶり、史上7頭目の無敗の桜花賞馬となった。