沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
デアリングタクトの桜花賞完勝劇。
この衝撃はまさにアーモンドアイ級。
posted2020/04/13 11:40
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
私たちは「名牝誕生の瞬間」の目撃者となった。
戦後初の無観客クラシックとなった第80回桜花賞(4月12日、阪神芝外回り1600m、3歳牝馬GI)は、降りしきる雨のなか、重馬場のコンディションで行われた。
新型コロナウイルス感染拡大防止のための無観客競馬は7週目。3週連続での無観客GIとなり、生演奏のファンファーレも、それに合わせた手拍子も歓声もない。
伝える私たちもそうした異様さばかりをつい強調してしまうが、レースそのものは素晴らしかった。重苦しい空気を吹き飛ばす、「歴史的」と言っても大げさではない強さを見せたニューヒロインが頂点に立った。
デアリングタクトは後ろの位置取り。
ゲートが開いた。
スマイルカナがハナに立ち、ナイントゥファイブ、マルターズディオサらがつづく。
1番人気に支持された武豊のレシステンシアは、17番枠から他馬と横並びのスタートを切った。一気に加速するのではなく、じわっと押し上げ、ゲートから1ハロンほどのところで4番手につけた。そこからさらにポジションを上げ、2番手で3コーナーに入って行く。
松山弘平が騎乗した2番人気のデアリングタクト(父エピファネイア、栗東・杉山晴紀厩舎)は、そこから5馬身以上離れた馬群の内にいる。
やや行きたがり、松山は重心を後ろにかけて手綱を引いている。が、それは掛かり気味の走りを制御するためだけではなく、外を塞いでいた馬たちを先に行かせ、自分が外に出る準備をしていたからでもあった。そのため、デアリングタクトの位置取りは、さらに後ろになっていく。
しかし、流れが松山とデアリングタクトに味方した。