ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ブンデス史上初「幽霊試合」と、
長谷部誠&鎌田大地が感じた戸惑い。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/03/23 18:00
ELでは鎌田大地、長谷部誠らの奮闘によって結果を残していたフランクフルト。再開後に再浮上なるか。
長谷部も鎌田も戸惑いを感じて。
これはDFLがCLやELのミッドウィーク開催による日程調整、またテレビ放映の都合などを加味したうえでブンデスリーガの月曜日開催を決めたことへのサポーターからの抗議が目的です。
ちなみに、月曜開催に関してはアイントラハトのクラブサイトもサポーター側に同調していて、あえて試合前の選手紹介や舞台を盛り上げる音楽などのアナウンスも自粛しました。
とはいえ試合後、長谷部や鎌田は口を揃えて「いつもと異なるスタジアムの雰囲気に若干戸惑った」と吐露していました。
アイントラハトのサポーターはドイツ国内でも屈指の熱狂的な集団と捉えられています。国内各地のブンデスリーガの試合を取材してきた僕の体感でも、アイントラハト・サポーターの声量はドルトムントやシャルケなどと並んで非常に大きいと感じますし、その一体感あるサポーティングスタイルにも迫力があると思います。
2017-18シーズンに30年ぶりにDFBポカール(ドイツ・カップ戦)を制したときは市内中心部のレーマー広場付近に約30万人の市民が詰めかけ、ベルリンでの決勝戦から凱旋してきたチームを熱く祝福しました。
また、昨シーズンのELで準決勝まで進出した過程での盛り上がり方は尋常ではなく、準決勝第2戦のアウェー、チェルシー(イングランド)戦では試合の模様が放送される市内のレストランやバーが超満員になって軒並み入場規制となりました。
「仲間」を失ったことの代償。
僕もフランクフルトに居を構える前まではアイントラハトのファン、サポーターがこれほど熱狂的だとは知りませんでした。でも、ホームのコンメルツバンク・アレナで初めて取材をしたとき、その轟音のような歓声とチャント、コールの嵐に驚愕し、このスタジアムで生まれる高揚感に胸を打たれたのです。
長谷部はよく、ホームゲームで勝利を収めた後に「相手チームはプレーし難そうに感じた」と言います。元々彼は日本でプレーしていたときも浦和レッズという国内屈指の動員力を誇るクラブに在籍していたので、サポーターの存在がどれほど試合内容に反映されるのかを明確に認知しているのでしょう。
だからこそ、先述したウニオン・ベルリンとのゲームでは本来ゴール裏に陣取る「仲間」の存在を失ったことで、アイントラハトはプレーレベルの維持が困難になったのかもしれません。