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強さも仏頂面にも全部理由がある!
孤高の大関・貴景勝の魅力とは? 

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飯塚さき

飯塚さきSaki Iizuka

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photograph byKyodo News

posted2020/03/20 09:00

強さも仏頂面にも全部理由がある!孤高の大関・貴景勝の魅力とは?<Number Web> photograph by Kyodo News

無観客開催のエディオンアリーナ大阪にて。春場所初日、貴景勝が高安をしっかりとした押し出しで下したシーン。

短所からヒントを得てさらに強く。

 さらに、自身の身体的な短所さえも、彼はその高い思考力でカバーする。

 人よりも腕が短く、ストライド(伸び)が小さい分、どう長くするかを考えた。

 出した結論は、「腕をまっすぐに伸ばすだけじゃなくて、そこからさらに肩関節を前に出してロックして、背中の力も使って押すんです。このほうが明らかに押せるし、相手が押してくる力にも耐えられます」。

 短所だと思っていた部分が、実はいいヒントにつながることがある。「もし、ある程度腕が長くて突っ張れていたら、この気づきはなかったと思います」と、自身も満足げに頷く。

 このように、何事も論理的に思考し、トライ&エラーを繰り返しながら自らの能力を向上させていく力は、心技体すべての鍛錬に貢献しているといえるだろう。

 貴景勝は、まだまだ完成形ではない。

 最新の栄養学やアジリティトレーニングなど、いいと思ったものはどんどん取り入れ、日々成長・進化していく。どうしたらもっと強くなれるか、どうしたらもっと勝てるか――。探求の旅は続いていく。

貴景勝の魅力その3:お相撲さんらしさ

 最後に、彼を語るに欠かせないのは、ずばりなんといっても“お相撲さんらしさ”だろう。

 元貴乃花・千賀ノ浦両親方には、力士が力士としてどうあるべきか、とことん指導されてきた。

「今でも気をつけているのが、草履をまっすぐきれいにそろえて脱ぐこと。この所作ひとつでも、きれいにできる力士が強くなれると教わってきたからです。プロの力士として、土俵上以外での立ち振る舞いの大切さは、僕も感じています」

 そもそも大相撲の魅力は、国技であり伝統文化であるところだと貴景勝は話す。

 競技スポーツとしての相撲は、アマチュアまで。プロになったからには、なぜ自分たちが着物を着てちょんまげを結っているのか、その意味と良さをよく考えて取り組んでいかなくてはならない。そういったことを、一般の人や、日本を訪れている外国の方にも伝えていく必要があると、彼は考える。

「相撲には、勝ち負け以上の良さがあるんです。ほかのスポーツでは、感情を表す場面は多いけれど、相撲は礼に始まり礼に終わる。勝っても負けても感情を出さず、相手に敬意を払う。その文化を伝えられれば、相撲には勝敗以上に美しいものがあるんだなと、より多くの人に理解してもらえると思っています」

【次ページ】 「僕たちだって仏頂面していたくなんかないです」

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