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<ベイスターズをのぞいてみよう!>
データ野球を支えるIT革命の実態。

posted2020/03/19 19:00

 
<ベイスターズをのぞいてみよう!>データ野球を支えるIT革命の実態。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

ラプソードは1台約70万円。メジャーリーグではブルペンに設置されているところが多い。

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田村航平(Number編集部)

田村航平(Number編集部)Kohei Tamura

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Asami Enomoto

 発売中のNumber999号の第2特集は、「ベイスターズをのぞいてみよう!」。NumberWebでも連動して、横浜DeNAベイスターズを特集します。連載ラストとなる第5回はベイスターズが2年前から導入している「IT機器」について。球場には、ひと昔前では考えられない光景が広がっていました。

 投手と捕手を結ぶ線上に、何やら見慣れぬ機器が――。

 ここは横浜DeNAベイスターズのファームがキャンプを張る、沖縄・嘉手納のブルペン。「Rapsodo」(ラプソード)と印字された機器が、ピッチャーの方を向いている。そしてキャッチャーの背後にはタブレット端末を手に、額を突き合わせて話し込む面々がいた。

 彼らの正体は、ベイスターズのチーム戦略部R&D(Research & Development=研究開発)グループの職員だ。今回、取材に応じた吉川健一と八木快は、さまざまな最新機器を使って得られた選手のデータを分析し、育成に役立てようと取り組んでいる。

 データサイエンティストの吉川が、解説してくれた。

「ブルペンに置かれていたラプソードは、主に投球の回転数、回転軸を計測するものです。投手は自分の感覚と数字をすり合わせて、本当に投げたいボールに近づけていく作業をします。ほかにもエッジャートロニック社製のハイスピードカメラでリリースポイントを1秒間に1000コマ単位で撮影し、視覚的にも自分がどんなボールを投げたのか把握できるようにしています」

 きれいなストレートを投げたいのに回転軸が傾いていた、スライダーのつもりで投げていたがカーブとほとんど変わらなかった……といった結果が出れば、自分で修正して次の投球練習に臨むことができる。

自分の特徴を理解するために。

 バッティングにおいては、バットのグリップエンドに装着してスイング軌道などを測定する「ブラストモーション」と、センサーを腰、胸、上腕、手につけて身体の動きを測定する「Kベスト」を使用し、データを集めている。バイオメカニストの八木は筑波大学大学院で動作解析を研究し、昨秋からベイスターズのR&Dグループに加わった。

「『ブラストモーション』はバットがどういう軌道で動いたか、『Kベスト』はバットを振るときにパワーが下半身から上半身へと連動できているかを計測しています。ただ、バッティングは正しいスイングをしたからといってホームランになるわけではないのが、難しいところです。今はまだ、理想のスイングを目指すためにデータを活用するというよりも、自分のスイングの特徴を知るために使っているという段階です」

 自分ではハイボールヒッターだと思っていたが、低めを打つときの方が強いスイングができている……という気づきも、測定によって得られるそうだ。

【次ページ】 スペシャリストがそろうR&D。

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