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就職活動で体育会系は本当に得か。
人事部へ、採用のススメと注意点。
text by
常見陽平Yohei Tsunemi
photograph byAFLO
posted2020/03/20 11:30
東京六大学野球は、野球はもちろん就職活動でもかなりの成績をあげているのだ。
大学、競技、価値観などを見る必要がある。
さて、人事は体育会系学生をどうみるか? 彼ら彼女たちは、丁寧に面接する。それが鉄則だ。「○○大学の○○部でレギュラー。関東一部優勝を果たした際の副将」などという肩書きをみてワクワクするかもしれないが、冷静にならなくてはならないのだ。
前提として、採用活動においては「ラベル」を信じてはいけない。体育会系に限らず「有名大学出身」「名門高校」「理系」「名門ゼミ」「サークル代表」などという「ラベル」だけを信用しないのが基本だ。
もちろん、これらのラベルには傾向のようなものはなくはない。例えば、東大・京大などの出身者は「“受験勉強”においては、日本トップクラスに優秀で、成果を出すことができた」という点などがわかるといえばわかる。
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ただ、実際には「ラベル」だけでなく「レベル」を見なくてはならないのだ。価値観、行動特性、思考回路、成長意欲、勝利の方程式などを解き明かすのが採用活動である。
「体育会系」は実に多様だ。大学、種目、レギュラーか否か、主将・副将・主務など責任のあるポジションかなどプロフィールの違いだけではない。何を成し遂げたのかという結果や、どのようにトレーニングに取り組んできたのかというプロセス、さらにはスポーツをする動機は何かなど、実に多様な体育会像がある。
過剰な期待は禁物。
ここで気をつけないといけないのは、体育会系に対する誤解、過剰な期待というものがあることだ。個別の学生をみなければ、判断できない。
たとえば、次のような期待は、間違いである可能性がある。
・体育会系は勝利に対するこだわりが強い
必ずしもそうではない。単にスポーツが好きでやっているだけの人も存在する。しかも、大きな成果を出しつつも。仮に勝利へのこだわりがあったとしても、それは本人の特性なのか、組織の風土なのか、指導者の関わりによるものなのかなど読み解かなくてはならない。
・上下関係が厳しく、理不尽な要求にも耐えられる
チームによっては、ジャニーズ事務所的な「君付け文化」でフラットな組織もある。仮に上下関係が厳しくても、役割行動だと割り切っている場合も。ゆえに、意外に部外の人と接するのが苦手だったり、部活関連以外の理不尽な要求は苦手ということも。そもそも理不尽に耐えられることを期待すること自体、日本の企業社会の歪みなのだが。
・チームで働くことができる
単なる馴れ合いや、逆に言われたとおりにやっているだけということも。同質集団での行動が得意なだけで、多様な集団におけるチームワークが苦手な人も。
・メンタルが強い
やることや、役割行動が決まっているので、意外にストレスがないということも。好きでやっているがゆえに、勝利のプレッシャーを感じないということもある。日本トップクラスのアスリートでも「メンタルの弱さが出た」などと報じられるのだから、メンタルの強さが「必ず」あると考えるのは間違い。仮にメンタルが強いと感じられても、個人によるものではなく、チームや指導者に支えられているというケースも。
・勝つために考えて行動する
意外に考えない人もいる。作戦やトレーニングメニューはすべて、監督や幹部が考えているということも。もちろん、この「考えない」ということを評価する企業や人も存在するのだが。結果は出すが、実は勝利へのこだわりがないということも。