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スノーボード伝統の一戦でW優勝!
角野友基、戸塚優斗が見せた創造性。
text by
野上大介Daisuke Nogami
photograph byBURTON
posted2020/03/11 18:00
BURTON US OPENハーフパイプで優勝した戸塚優斗。スロープスタイルでは角野友基も表彰台に上がった。
技術の高い日本人ライダーへの挑発。
39回目を迎えたBURTON US OPENで用意されたスロープスタイルのコースはとても挑発的に映った。語弊を恐れずに言えば、高い技術を誇る日本人ライダーたちに対して挑戦状を叩きつけているようにさえ感じるほどに。
これまでのBURTON US OPENで用意されたジャンプセクションはストレートジャンプが中心だったのだが、今大会でそれはひとつだけ。残るふたつは先述したようにトランジションが採用された。ハーフパイプを半分にしたクォーターパイプ状のジャンプ台がフロント/バックサイド双方に設定されており、これらを攻略する滑走技術は通常のパークライディングだけで培うことは難しい。より総合滑走力や創造力が問われるコースでの争いとなったのだ。
前回の優勝時に角野が決めたバック・トゥ・バック(連続)のトリプルコーク1620は、あれから5年が経過し、トリックの高難度化が止まらない現在においても、いまだ成し遂げるもののいない超絶ルーティンとして記録にも記憶にも残っている。
しかし、当時は前半に3連のジブセクション、後半に3連のストレートジャンプが用意された単調なコース。今回は明らかに難易度の上がった舞台で、世界のトップランカーたちとの頂上決戦を制したのだ。角野の喜びが言葉にならなかったことも頷ける。
メインのハーフパイプは“改造コース”。
その翌日にはメインイベントとなるハーフパイプ決勝が行われたのだが、モディファイド(改造)ハーフパイプと称されるコースで争われた。上部と下部でハーフパイプが分割されており、前半は一般スノーボーダーでも楽しめる高さ4mのミニパイプ、後半は通常通り高さ6.7mを誇る国際規格のスーパーパイプが待ち受けている。
壁の高さが低いミニパイプはイージーに感じるかもしれないが、高難度な技ばかりが求められてきた現代スノーボードにおいては、むしろ逆なのかもしれない。縁にあたるリップを利用したスケートボードさながらのトリックや、そのリップに手をついて身体を重力に逆らうように持ち上げるハンドプラントなど、技の難易度以上に表現力が重視されるからだ。
こうした山全体の地形を活かして“遊ぶ”ように滑るスノーボード本来の滑走技術は、生真面目にハーフパイプの練習を繰り返しているだけでは培えないものだ。国際スキー連盟(FIS)主催のW杯はこれまで通りだが、プロ大会のDEW TOURでもすでに改造パイプが採用されている。
しなやかな身のこなしや勤勉な国民性が相まってか、日本は反復練習の賜物と言えるハーフパイプの成績も素晴らしいのだが、高難度トリックをミスなくつなげる上手さが際立つ反面、クリエイティビティのある滑りを発揮できるライダーが少ない。それだけに、改造パイプでの戦いはスロープスタイル同様、日本人ライダーたちの真価が試されているように強く感じた。