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初の女性棋士誕生、ハナ差届かず。
「奨励会」経験記者が知る過酷さ。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byKyodo News

posted2020/03/10 07:00

初の女性棋士誕生、ハナ差届かず。「奨励会」経験記者が知る過酷さ。<Number Web> photograph by Kyodo News

2018年マイナビ女子オープンを制した時の西山朋佳三段。2019年には女王、女流王座、女流王将の三冠を独占した。

三段リーグで戦えるのは残り3回。

 西山朋佳さんは現在24歳で、6月27日に25歳になる。つまり、三段リーグで戦うのは基本的には残り3回。来期は順位1位で戦えるのが大きな強みだが、続けて好成績をあげる難しさは本人もよくわかっているだろう。

 将棋の世界は、若さ、言い換えれば早熟さがなによりも強いアドバンテージとして幅を利かす。そのことを西山さんも承知しているはずだ。

 期待度、注目度はさらに増すことだろうが、その中を勝ち上がっていく難しさも同様に増すことも、傍観する側として考えてあげたい。

2人の退会者の無念、そして意地。

 今期のリーグ戦からも、2人の退会者が出た。

 最終日に1敗を喫して9勝9敗に終わった関矢寛之さんと、8勝10敗の荒田敏史さん。満26歳を過ぎてもリーグ戦で勝ち越すことができれば在籍延長となる規定だが、2人は僅かに届かなかった。

 筆者は振り返れば41年前に、21歳の誕生日に初段昇段の上がり目を潰して退会を言い渡された。

 三段まで上がった人とはレベルが違う話だが、精神的に立ち直るまで何週間もかかったことを覚えている。特に関矢さんは最終日に2連勝なら来期に夢が繋がっていたわけで、しばらくは眠れない日々が続くのかもしれない。

 強靭なメンタルの持ち主ではないかと勝手に想像しているのは、荒田さんだ。

 1月19日の例会で9敗目を喫し、その時点でリーグ残留の可能性は途絶えたというのに、そこから最終日まで指し続けて6連勝。最終戦で井田明宏三段に敗れたが、この奮闘ぶりは次の人生に必ずや生かされることだろう。

【次ページ】 新人王戦にはまだ勝ち残っている。

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