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「個人昇格は大歓迎」と言い切る
J2山口・霜田監督の育成術、前編。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byNorio Rokukawa

posted2020/02/22 11:50

「個人昇格は大歓迎」と言い切るJ2山口・霜田監督の育成術、前編。<Number Web> photograph by Norio Rokukawa

タイキャンプ中にインタビューに応じた霜田正浩監督。その育成法が、レノファ山口のクラブとしての立ち位置を確固たるものにしている。

ロペテギとポルトガル語で直接会話。

――レバークーゼンのあとは、どちらに?

「次はスペインのセビージャ。これも僕らのネットワークの中でコンタクトを取ったら、SDのモンチが直接、『見に来ていいよ』と言ってくれて。セビージャは3日間、非公開練習だったんだけど、全部見せてもらった。監督室で(ジュレン・)ロペテギとも話をさせてもらってね。

 ロペテギはポルトの監督をしていたからポルトガル語を喋れるので、直接話ができて、彼にも哲学や戦術の話を聞かせてもらった。モンチもあれだけの実績を残している人だから、いい話が聞けて。康平とも昼間からビールを飲みながらサッカー談議の毎日(笑)。そういう時間が自分には必要だったかな、と思いますね」

――その2チームですか?

「その2チーム。1週間しかなかったので。最後は大迫(勇也)のブレーメンの試合を見ました。大迫に電話して『明日、応援に行くから』って。それで帰ってきてからは、チーム編成。これも大変でね(苦笑)」

J1全クラブに「どうぞ」と言えるくらい。

――霜田さんがレノファの監督に就任されてから、小野瀬康介選手(ガンバ大阪)、オナイウ阿道選手(横浜F・マリノス)、高木大輔選手(G大阪)がJ1にステップアップしていきましたが、今オフも菊池流帆選手(ヴィッセル神戸)、前貴之選手(横浜FM)、三幸秀稔選手(湘南ベルマーレ)が個人昇格していきました。

「個人昇格は大歓迎。うちが評価されたっていうことだからね。ただ、本音を言えばチーム編成的には厳しいよ。特に、三幸や前は僕のサッカーを最も理解していた選手たちだから。それだけじゃなく、我慢して育てていた流帆、一人前になってきた(山下)敬大(ジェフ千葉)もいなくなった。流帆の場合は、もう少し育てたかったというのが正直なところ。J1全クラブにもっと自信を持って『どうぞ』と言えるくらいまでは。

 でも、止められないよね。本人は1日でも早く上のディビジョンでやりたいわけだし。クラブとしても移籍金が入るのは経営面で大きいし。このサイクルは、鹿島(アントラーズ)がヨーロッパのクラブに選手を次々と獲られているのと同じで、J1の若い選手はどんどんヨーロッパに行く、J2の良い選手はどんどんJ1に行く。サッカーの世界では当たり前のことだから、ネガティブには考えていないです」

【次ページ】 交渉の席での言葉を嘘にしない。

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